恭介

ホステージ 戦慄のテロ計画の恭介のレビュー・感想・評価

3.3
どうも最近実話ものを観たがる傾向がある。どこかで、事実は小説よりも奇なり的な展開を期待しているのかな。

本作も実話物。
そんな昔でもない80年代、ロシアがまだガチガチの社会主義国でソ連だった頃の出来事。

物語は結果的に悲劇だ。
数人の若者達が、自国を離れて他の国に行ってみたい。ただ、これがけの思いが大きな悲劇を生んでしまう。

民主主義国家に暮らす者としては
え?普通に海外旅行すればよくね?になるのだが、当時のソ連ではそうはいかない。
渡航の自由が全くない。西側諸国など害悪でしかないという思想を植え込んでた、国家レベルの洗脳が普通に行われてた時代だ。少しでも西側に興味を持つ発言や行動を取ると、KGBに目を付けられ亡命希望者と見なされてしまい、ひどい場合は投獄またはシベリア送りだ。

そんな抑圧された思想に不信感と不満を抱くのはごく自然な流れ。もちろん今みたいにインターネット等が普及してなくて、情報も限られていたであろうが、知る欲求を完全に抑圧するのは到底無理だ。

そんな彼らが新婚旅行を装い、空港関係者の知り合いを使って手荷物検査をスルーして武器を持ち込みハイジャックを計画。

しかし、不運が重なりそれが悲劇に直結する。確かに計画と言えるほど万全ではなかったり、人により決心の度合いに違いがあったから計画倒れも当然と言えば当然。


以下、ネタバレあり



何故いきなり殴りかかり銃をぶっ放したのだろう?思いには同情の余地はあるが、行動が場当たり的なテロリストにしか見えなかった。その辺が若さなのか、未熟さなのか・・・無関係な人を巻き込み命を奪ってしまった事については同情の余地はない。空港に帰ってきた飛行機に向かって人質がいるにも関わらず、銃を乱射して余計に犠牲者を出した軍もどうかと思うが。

大半の主犯格の若者達は死刑になった。
しかし、いまだにその遺体は何処に埋められたかは明らかになっていない。

そして、ソ連が崩壊して渡航が自由になった現在。何処にいるか分からない彼らは今のロシアを見たら何を思うのだろうか。

映画的には非常に淡々とした流れなので
後半のハイジャックシーンまでは少し長尺に感じる。丁寧に描かれているという風にも取れなくもないが、映画的な技法とかは用いらず第三者の視点で冷静に見つめている感じ。

史実を描いている映画は、今まで知らなかった歴史を発見し、良し悪しは別として当時の人々の思いに触れる事が出来るのも映画の良さだと気づかせてくれる。
恭介

恭介