たつなみ

愛しのアイリーンのたつなみのレビュー・感想・評価

愛しのアイリーン(2018年製作の映画)
5.0
2019年初レビュー。
皆さま本年も宜しくお願い致しますm(_ _)m

新年1発目はあの大傑作『ヒメアノ〜ル』の吉田恵輔監督作品から。
ちなみに原作コミックは既読。
原作が持つ出口の無い閉塞感や理不尽さをとても上手く表現しているだけじゃなく、人間の愚かさ、滑稽さ、愛おしさ、哀しさが全て詰まっている。
正に『人間』そのものを描いた作品。

主人公岩男は原作だと熊の様な大男なので、安田顕はどうかと思っていたが、岩男の朴訥さと無様さがちゃんと出ていて全然違和感が無かった。
アイリーン役のナッツ・シトイや、かーちゃん役の木野花は完全に原作通りで、キャスティングは申し分無い。
特に吉岡愛子役の河井青葉さんは原作のしたたかさとエロさが凄く良く出てる。

『血縁』や『しきたり』という名の牢獄に囚われ、そこから抜け出そうともがく岩男。
フィリピン人のアイリーンと勢いで結婚してしまった(というか手っ取り早く『おま◯ご』がしたかっただけなのかもしれない)が、結局彼はそこから逃れる事が出来ない。
シチュエーションは違えど、己の出自から逃れることが出来ないのは現実でも同じ。
愛子が岩男に見せたあの笑顔は、まるで『逃げ場なんてどこにも無い』という諦めの表情に思えた。
そう考えると岩男だけじゃなく、主な登場人物全てが出口の無い閉塞感の中にいると言える。

『ヒメアノ〜ル』と同じく、随所に笑えるシーンもある。
あんな下品な『プラトーン』オマージュ初めて観たわ😅
あとアイリーンと岩男がケンカしてる間で琴美がパンツ履き直してるシーンは最高に笑えた。

重苦しい物語展開ながら、ラストは愛で溢れている。
岩男の不器用なアイリーンへの想いが文字通り胸に刻まれる。
凄く生々しくて、下世話で、薄汚い物語だけど、まさかあんなに泣かされるとは思わなかった。
さすが吉田恵輔! 次作も楽しみ!

映画館で観るのを諦めてた作品だったけど、三河のこんな小さな映画館で観られたとは!何という幸運!
今年も良い映画に出会えそうだ😄