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カツベン!のkuramaのネタバレレビュー・内容・結末

カツベン!(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

活動弁士、という仕事は本作の劇場予告で初めて知りました

ある仕事をテーマにした作品も映画ドラマ問わず好みなので楽しめ、全体的には面白かったです
時代も好みである大正時代なのも◯
あまり大正浪漫ロマンはしてないですが

黒島結菜さんも素敵でした
(観る決め手といっても過言ではない)

個人的にはハッピーエンドを期待していたのですが、残念ながらそうはなりませんでした
何をハッピーとするかはありますが
(主人公はカツベンが出来れば満足なので、主人公はハッピーエンド)

残念なオチですが、主人公は罪を犯したため、ストーリーの流れ的に逮捕、服役、がベストエンドというのは分かります
これで逃げて幸せに、、、はモヤモヤするでしょう

主人公が犯した行為は映画の肝であるラスト、ドタバタのキッカケであります

物語の冒頭、少年時代の主人公が窃盗を気軽に犯す描写があり、青年期に結果として罪を犯してしまう流れを自然にするという神がかりな演出がなされます

更に少年時代の主人公が窃盗をするのは、仲間の別の子供が気軽に窃盗をするため、少年主人公も気軽に窃盗をする流れを自然に作ります

つまり、ラストのドタバタのキッカケが主人公の犯罪行為なのですが、流れとして
・子供時代の仲間が気軽に窃盗する
・子供時代の主人公がそれを見て気軽に窃盗をする
・2回目は流石にバレる
・青年期に仕事として窃盗集団になる
(騙されたとはいえ、やらない選択肢はあったハズ)
まあ、そうなるわな、、、
と思うので、演出としての違和感も無く、物語としては成立しているのは流石

であれば、だからこそ、ドタバタのキッカケは犯罪行為でなくとも良かったのではないか?と思えてなりません

時代的に裕福でないのは分かります
ヒロインの子は映画(活動写真)を見た事はなく、主人公はセリフを覚えるくらい見れるほどの境遇
また、ヒロインの子はキャラメルを食べた事は無く一回を半分に分けて大切に食べるのに対し、主人公は一口でペロリ

少年期における一つひとつの仕草、物の価値に対するズレがあるという描写、演出の積み重ねから青年期冒頭での犯罪、ラストのドタバタ、オチのための材料になるので、妙に納得してしまいます

反対にヒロインの子は少女時代に映画(活動写真)に出演した事がキッカケで女優になります
映画の只見という行為をし、上述の主人公が気軽にしてしまう犯罪ネタの一つとなりますが、ヒロインの子は自身が出演した映画を見た事で純粋に女優になる布石として描かれます
その後の伏線回収も丁寧に描かれます

ラスト、主人公が世話になった映画(活動写真)館が火事になります
結果としては青年期の冒頭で得た罪の無い人達の金で復興をする事になりますが、映画館の主人やスタッフは金の出所なぞ勿論知らないのでモヤモヤはします
さらに、そもそもの青年期冒頭における犯罪の黒幕である映画館(ヤクザ連中)はお咎めはないのが妙にリアルでモヤモヤします(直接のヤクザは捕まりますが)

永瀬さん演じる弁士は引退したのかな
時代の波から活動弁士の終わりを危惧していたため、上述した映画(活動写真)館の復活エンドとの対比であり、良い終わり方だと思います

この様に各登場人物達のエンディングもしっかりしていて、丁寧な脚本、演出に気付けば気付くほど、なぜ犯罪以外の流れでのドタバタコメディにならなかったのか、と残念でなりません

とはいえ、良い作品でしたので、失われた職業や時代を感じるテーマの映画があれば今後もみたいと思います
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