乾燥機

カツベン!の乾燥機のレビュー・感想・評価

カツベン!(2019年製作の映画)
4.3
カツベンという映画を観てきた。

本作では、まだ映画に音声が無かった頃の日本が舞台。

明治・大正期、映画は活動写真と呼ばれていた。

その時代、活動写真に声をあてて吹き替えと説明を担当する活動弁士が脚光を浴びていた。

そんな活動弁士になることを夢見た一人の青年を主人公にした物語。

多くの展開があって、ほのぼのとしたギャグがあって時代背景の関係上登場人物が随所で和服を着ている。

まさに師走から年末年始の今の時期に観たくなる映画という感じだった。

活動弁士と落語家には似た格好良さがある。

言葉だけで人を惹きつけて感情を動かすなんて本当に凄いことだ。

主演の成田凌に関しては演技も喋りも上手だなぁと感心してしまうほどだった。


しかも、わかりやすくて笑えるユーモアが盛り込まれていたので誰と一緒に観ても楽しめる筈だ。


そして、個人的に印象的だったのは終盤の主人公と悪人と刑事とが逃走追走し合うシーンだ。

この三人が逃げるのに適していない逃走手段、追うのに適していない追走手段を選ぶ。

始めはなんでだろう?と思いながら観ていた。

しかし、途中からは本当は捕まえたくないし、本当は逃げ切りたくないのかもしれないなと思った。

あわよくば逃げ切ってほしい、あわよくば捕まえてほしいと思いながら互いに逃走追走しているシーンだったと考えると色々辻褄が合う。


ただコミカルなだけじゃなく、意味深で考えさせられる映画。
個人的にはすごく好きだった。


「映画にはサイレントの時代があったが、日本には本当の意味でのサイレント映画はなかった。それは活動弁士が居たからだ。」

という意味合いの言葉が本作のラストで引用されるのだが、なんだか素敵だと思った。


創意工夫をして、今よりもいろんなものが無かった時代に日本人は娯楽をより楽しむ方法を模索していたことがわかる。


色んなものが便利になって、無いものよりもある物の方が多い時代で、僕らは今を楽しむ創意工夫を果たして出来ているのだろうかということを考えさせられた。


あとはなんと言っても黒島結菜がかわいい。
乾燥機

乾燥機