かめの

カツベン!のかめののレビュー・感想・評価

カツベン!(2019年製作の映画)
3.6

徳川夢声をモデルにした先輩弁士が登場するという話を事前に聞いていたから、主人公の語りはやっぱり知識人に愛された「語りすぎない語り」なのかと思いきや、まさかの…。いや、当時本当にああいう弁士がいたことは確かで、観客に愛されていたんだろうとは思うんだけど、活動弁士をテーマにした作品でありながら、主人公がああいう語りをするってことはそこに意味を持たせない限り、成立するのかな?つまり、彼のような弁士は映画史的観点から語るとすれば、活動を誤ったかたちで流布していたわけで…。そうであるとすれば、この映画を見て活動弁士を知った世代に偏った知識を与えてしまうんじゃないだろうかと危惧してしまう。周防監督はもう、そこまで考えないといけないほど大御所的立ち位置にいるわけだし。エンターテイメントとしては最高なんだけどね。意味が欲しいんです(私が気付いていないだけだったら、本当に教えて欲しいコソッと)。

手を繋いで逃げるシーンのリフレインはややくどく、前時代的なギャグや展開に若干苦笑い。映画館なのに、あの箪笥のシーンで少しの笑いも起きなかったんですけど(他のシーンも特に笑いは起きず)。朝一だからなのか、観客とのギャップが生じてしまっているのか。

ここまで言いつつ、全体としてはなかなか面白かった。弁士を題材に扱うと、トーキー時代→弁士の終焉、を描くという、よくある流れを裏切ってくれたのは頗る非常に良かったな。

『キネマ旬報』特集の佐藤忠男の批評も見るべし。
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