マシュウ

来るのマシュウのレビュー・感想・評価

来る(2018年製作の映画)
4.2
中島イズム炸裂の映画。監督がお祓いライブ映画と称した通りワクワクとドキドキを楽しむ作品。軽快な明るい音楽にバイオレンスな映像とブラックユーモア満載。しかしながら原作を期待して鑑賞するとがっかりすると思います。

映画を原作小説と比較するのはナンセンスだという意見は重々承知の上で個人的見解を述べると、「絶対に答えたり、家に入れたりしてはいけない」という小さい頃聞いた民間伝承の逸話や捨て子の風習など地方にまつわる民俗学的かつ具体的な物語が疎かになっていた。それこそが「ぼぎわん」を超常現象ではなく実体として浮かび上がらせる重要なポイントで、内側に迫ってくる恐ろしさの核だ。そしてそれらが通常のホラー作品とは一線を画する理由になっているのだがこの映画はその部分を描いていない。「ぼぎわん」はどこからきたのか?正体はなにか?ということが結局わからないままエンディングを迎え、喉につっかえたものが取れないまま視聴者は物語から締め出されてしまう結果となった。

ただ映像ならではの素晴らしい表現も随所に見られ息を飲んだ。ストロボを焚くように所々差し込まれる、禍々しく渦巻く赤や前衛芸術のような絵画風のイラストたちが全体を通して緊張感を与えていた。加えて「告白」を彷彿させる美しい血しぶきだ。ショッキングで一瞬も気が置けなかったため映画が終わったあと全身の筋肉が強張っていた。
マシュウ

マシュウ