柏エシディシ

来るの柏エシディシのレビュー・感想・評価

来る(2018年製作の映画)
3.0
面白かったけれど、怖くはなかったかな。
毎回劇場に足を運ぶくらいには中島作品ファンだけれども、中島監督のハイパーリアリティな映像タッチはホラー作品と食い合わせが悪いんじゃないかという懸念は拭い切れず。

戯画や風刺画が時にリアル以上にリアリティを持ってリアルを射抜く様に、中島監督の時に笑いさえ起こさせてしまう様な過剰なビジュアルは「現実の世界」を誰よりもリアルに切り取ってきたと思うし、そこが中島作品の魅力だと自分は考えてるんだけれども。
しかし、もともと此方と彼方の境界をあやふやに描く心霊ホラー的な作品の俎上では、どうしたって過剰なビジュアルが「つくりもの」感が助長して没入出来ず恐怖心のフィルターになってしまって、「ホラー映画」としては楽しめなかったのです。
恐怖演出もどこか記号的でフレッシュさに欠けるし。これは近年、良質なホラー映画が増えてきてこちらも贅沢になっているせいかもしれませんが。

しかし、それを差し引いても本作は実に面白い。
中島監督はデビィッドフィンチャーやキューブリックの様な偏執的完璧主義ビジュアリストであると同時に、ハネケ級の人間不信の作家でもあり、第1幕第2幕はどんなホラー映画よりもおそろしい日本社会、いやさ世界の偽善と歪みをあぶり出しててゾクゾクする。
(家族不和やネグレクトは「キャリー」や「エクソシスト」「シャイニング」を引き合いに出さずともホラー映画の伝統ではありますが、ジャンルに問わずこういった題材の作品が多かったのも近年の傾向でしょうか。ラブレス、ハピネス、ヘレディタリー、万引き家族、フロリダプロジェクト、アイトーニャ、、、私たちの未来は大丈夫なのか?)
その題材に対して、結果として救いを見出したくなるような結末に一旦はなりますが、「ベロベロバー」的演出で照れ隠しなのか悪い癖が最後に出てしまって少し落胆しないでもないないですが、監督らしいっちゃ、らしい。

そして、多くの人が指摘するとは思いますが、第3幕に至っての荒俣宏的エクストリーム展開はビジュアリスト中島哲也節全開で単純にアガります。松たか子のキャラクターはズルいでしょwあんなのカッコいいに決まってる。
前知識なかったので、やはりこの流れは読めず面白い。原作も気になります。
柏エシディシ

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