天下の超かぼちゃ王大将軍

来るの天下の超かぼちゃ王大将軍のレビュー・感想・評価

来る(2018年製作の映画)
4.3
「オブラートに包まれたグジュグジュの糞みたいな悪意」

「告白」の中島哲也監督って事で、気にはなってたんですが、
帰阪して久々のTOHOシネマズ梅田にて。

原作のホラー小説があるそうですが、見終わった感覚としては、
まぁ中島哲也監督作の映画って感じで、見たい映画が見れた満足感はあり。

逆に言えば、「普通のホラー」を想像すると外しては来るので、
その辺で思ってたのと違うって思う人は多くいるかもしれないかなぁ。

個人的には見るつもりの映画を観れて満足やった。

まぁ冒頭からの妻夫木のくだりは正直しんどかった部分はあったけど、
明らかなな仕掛けなので我慢は出来る。ただ、長かったw

そこを越えて、「それ」が顔を出して来たらお話というか、各キャラクタが加速していく。

「それ」自体より、人の暗部にスポットが当たる展開っては中島哲也監督らしく、原作ももしかしたらそうなのかもしれんけど、個人的にはこういう人間の面の皮を裏返したらこなるみたいな感じが好物やねぇ。

ただ1点、妻夫木の育メンブログは気になった。
今ならインスタちゃう?って。
製作時期もあるのかもしれんけど、ブログは題材として古すぎるかなぁって。
作品自体の時代がそうなのかもしれんけど、インスタ映えとかの風刺が効いてたら、なんか今風になったかなと思って、少し惜しい。

人の面の皮が裏返ってからはもう怒涛やね。

音楽の使い方もやっぱり上手くて、惹き込まれてみてしまうし、
画作りの上手さも余計壮大さが凄くて。

ただ、現実的な面がどこかあって、地に脚はついてる。

この手の感覚の映画だと、ファンタジーに大きく振り切れることが多いんやけど、きっちり現実に脚着けてるっていて、その上で視点は大気圏超えて宇宙にいるみたいな壮大さ?不思議さ。

ホラーと言うよりエンタメってのは確かに分かるワード。
ただ、エンタメって表層を包んだオブラートのようなもんで、
オブラートの中にはグジュグジュに煮詰まった糞みたいな悪意が詰まってる感じ?

演出次第ではもっとありきたりなホラーにもなりえたと思う。
逆に、もっとコミカルなしょーもないホラーにもなりえたと思う。

シナリオ部分だけ見てみると、ふざけた所は無く、シンプルにホラー。悪意も極端に象徴化したようなものよりは、現実味が凄く強い。
もっと言えば、「それ」はネットロア(ネット上に溢れる都市伝説)を彷彿とさせる現代風の不気味さがあって。

これを真摯に調理すると辛口がきつくなっちゃうと思うんよねぇ。
これは告白もそうやったけど、これを口当たりよく仕上げて食わせる感じ?
喰える喰えると思って食ってたけど、よく考えたらこれ辛くね?みたいな。

これ、Jホラーでよくやってしまうのは、甘口にしてしまう。
コメディ調が強くなってしまって、怖くもなく、ただ滑稽になってしまう。
そこはしない。

素材の辛口、スパイシーな部分、えぐみはそのままに、変えず、活かして、ただ、口に入れられる柔らかさだけを演出する、錯覚させる。

このバランス感覚は凄いなぁと感心した。

欲を言えば、ラスト、もっと絶望的な、なんかスッキリしない胸糞ラストにして欲しかったかなぁ。
ラストについては意外に普通やったかな。

最後の後味が思ったよりさっぱりやったけど、食べたい味を食べれて満足でした。