マヒロ

来るのマヒロのレビュー・感想・評価

来る(2018年製作の映画)
4.5
『告白』『渇き』がそんなでもなかったので、割と期待低めに観にいったんだけど、これが予想以上に面白かった。
前2作のイキリっぼさというか中二病っぼさがいい感じに薄まって、くだけた雰囲気になっていたのが良かった。
一応ホラーではあるけど、正直そんなに怖いわけではなくて、むしろハイテンションバイオレンスエンターテイメントとでも言うような特盛感。

「ぼぎわん」と呼ばれる土着の霊(妖怪?)のようなものが、何か異様な執着でもってある一家を襲う…という話なんだけど、怖いというか厭なのはそちらではなく、冒頭の親戚の集まりや結婚式のシーンの地獄のような居心地の悪さだったり、究極に人間としての中身のない妻夫木演じる夫のヘラヘラっぷりとか黒木華演じる妻が子育てノイローゼに陥る様とかの、やたらとじっくり描かれる「失敗した結婚」の様子。ここら辺が妙に上手くて、最早ショックシーンが息抜きになるような息苦しさがある。「ぼぎわん」がなぜ現れたのかという理由が明らかになると、この厭な描写の積み重ねは映画に説得力を持たせるために必要不可欠なものだったんだということが何となく分かってくるんだけど。

後半、ぼぎわんを祓うために各所から霊媒師が集まってくるという、突然のマンガみたいな展開が面白かった。松たか子のキャラクターはちょっとやり過ぎだけど、仲間がやられたことを遠方から察するシーンがイカした坊さん集団に女子高生霊能者グループや、琉球のおばちゃん軍団など、思想・宗教・流派一切関係なく同じ目的の為に一堂に会するというのは、大いにハッタリが効いてて良い。中でも、元人気霊能者(宜保愛子みたいな?)という設定の柴田理恵が、一人だけハードボイルドな雰囲気を湛えためちゃくちゃ渋いババアを演じていて、なんだかめちゃくちゃ格好良かった。バラエティのワイプでおいおい泣いてるおばちゃんと同一人物とは思えぬほど。

岡田准一演じる主人公のライターが典型的な巻き込まれ型主人公で、あまり事件の深いところに関わっていないので妙に浮いてるあたりがちょっと残念。あの人を食ったような変なオチは、彼のような部外者がいたからこそ成り立つものだったので、いなかったらいなかったで映画が締まらないような気もするが。

とにかく、2018年に見た邦画ではこれが一番だった。

(2018.80)[31]
マヒロ

マヒロ