このレビューはネタバレを含みます
この映画をきっかけに原作「ぼぎわんが、来る」を読んでハマり、比嘉姉妹シリーズを楽しんで読んでいる者としてもう一度本作を確認したのだが、物申したくなったので再レビューする。原作の決定的なネタバレは省くが、内容を予測できるような言い回しにはなるかもなので原作をこれから読むつもりで一切のバレは許さぬ！という人はここで読むのをやめてください。原作はいいゾ。書きたいことを好きなように書きます。
まず私は中島哲也監督の感性や作品が嫌いだ。告白も、来るも、映画で有名になって原作も売れて認知度は高まっただろう点だけは評価する。今作についてはホラーシーンのセンスは悪くなかった。しかし、なんでも彼色に染めすぎだ。個人的には別の監督に撮ってもらいたかった。
「来る」は初めて観た時は新鮮で気にならなかったが、原作を読んでから改めて考えると、結局中島監督お得意の胸クソ群像劇とカオスコラージュ映像と鬱陶しいほどの後からの人情ベタ押し法に、原作を捻じ曲げてまで当てはめられているだけだった。
①田原(妻夫木聡)はまだいいが、田原の妻、香奈(黒木華)の扱いが酷い。彼女は原作で不倫なんてしないし、子育ても一切放棄なんてしていないし、旦那の死後は真琴と野崎がかなり面倒見てくれていたから保育園にも預けてない。旦那の実家であんな扱いは受けていないし、絶縁もされてない。ここまで逼迫している描写などない。派手に飾って出かけるシーンもない。映画の彼女には救いがなさ過ぎる。NTRされたりシンママになって落ちていく地味妻を撮りたかっただけじゃないの？ちなみにぼぎわんの襲撃シーンも駅のトイレではない。あのシーン、いいのになんでやらなかった？あと別に彼女の母親なんて出てこなかったはず。わざわざより不幸にして殺すって酷いと思う。民俗学者の男友達も中身から全然違うよ。あんな頭空っぽイキリヤンキーまがいのキャラクターではないと思う…。結末も違う。育パパの集まりでカラオケで隣の部屋で踊るJKを覗き見してうひょうひょするキモ野郎達のシーンなんてないしね。なんでそんなの思いつくの？キモい。
②比嘉真琴(小松菜奈)も野崎(岡田准一)もキャラクターが微妙に違う。二人ともこんなやさぐれた雰囲気はない。原作の真琴はもっと威圧感がないいい子。自分が周囲の人と比べてさほど頭が回る方でも知識が豊富なわけでもない、という意味合いでの「私バカだから」という台詞はあるけど映画のように吐き捨てるようには何度も言わない。野崎は真琴に「起きろブス！」なんて言わない。二人は絆で結ばれたカップルなのになんでこんなに馬鹿で荒々しくなるんですか？野崎はここまで無礼な奴ではないし、原作だと能力を持たない一般人の中ではトップクラスに頑張って役に立っているのに映画ではイキリポンコツ野郎にされたの酷い。
③比嘉琴子(松たか子)は許容範囲だけど、真琴のことを「このバカ」と呼んだりしない。あと日本各地から霊能者呼び寄せてその人たちがぼぎわんに壊滅させられるシーンなんてないww 映像的には面白いけど、ただそういうシーンやりたかっただけだよね〜って感じ。琴子は巫女の格好なんてしてこないしね。原作はシャツにジーパンでしたよ…。いや待て、原作の日本を代表するつよつよ霊能者比嘉琴子が直々にぼぎわん退治をする理由は、第一に妹の真琴を救うため、第二に真琴の頼みで田原知紗を助けるためである。なのにその子供は助けるのムリかも…みたいなつめたいムーヴし出すのはキャラ変過ぎる。やっぱりあかん！
④そもそもぼぎわんとは何なのか？映画見て分かる人はいないよね。要らんシーン増やして肝心の解説が少な過ぎる。芋虫も出てこないよ原作は…。除霊シーンもカオスで終わったけど原作はそれなりにちゃんとやりますし…。
書きながら、なんか「告白」や「渇き」で味を占めてぼぎわんも同じようにお料理しちゃったのかな？って思いましたw
ビジュアル特化の監督ですね、そのビジュアルも嫌いだけど。本来のテーマさえも変わっちゃってる感じ。
同じように小説とは別物だけどリングは原作も映画もどちらも良い(映像のインパクトはやはり凄いが、原作も負けずにこわい)と思えるけど、こっちは受け付けないな〜！そもそもザワザワするような結婚式のシーンとか、田原秀樹がウソつきよばわりされてるのとか、幼馴染の女の子も原作にいないからね。別にアイツ嘘つきではなかったし…。解釈が雑、というか捏造が多すぎる。
尺や都合上…程度の改変は認めるけど、もうその域を簡単に超えちゃってるんだよね。無駄に気分悪くなるようなシーンが多い。ホラーシーン以外つまらなくて見てられなかった。原作はもっとちゃんとした作りだよ。死者も最小限で済んでいる。子供時代の田舎の祖父母宅での邂逅シーンはもっと丁寧にやってほしかったな。
比嘉姉妹シリーズはNetflixとかでお金かけてドラマ化またはアニメ化してくれないかな〜大人向けに！
