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来るのMKのレビュー・感想・評価

来る(2018年製作の映画)
1.9
んー。
ムスビとオトヅレ。
そんな風に日本の宗教性を説いた偉人がいたけれど、自分の中では日本の宗教は結界と不在にあるものだと思っていた。注連縄を結んだ場所を聖域とみなし、自然豊かな気候風土ならではの風、木々の揺らぎ、そういったものが織りなす音の重なり、まさしく音ずれ。そんなものが人々の畏敬の念を助長もするし、親自然的なこの国の信仰の象徴に他ならないと思っていた。
来るーきっと来るーなんて流行りもしてしまったけど、来ているかもしれない、実態を伴わない観念的な怖れ。だからこの作品はホラーでもなんでもなくて、この国の神性に踏み込んだエンターテイメントなのかなぁと思っていた…前半。

でもなんか描き切れていない気がしてしまったなぁ。相変わらずスタイリッシュに表現をしている作風は理解するのだけれど、なんとなく論破してくれないというか、作家性にとどまった、真理を説くほどの崇高な作品性は感じられなかった。
除霊モノとしても物足りなかった…自分の読解力の無さかもしれないけど。

金払って観るエンターテイメントっていう大前提もあるし…、共感も共有もアテにしない圧倒的な才能は感じたけれど、正直、理路整然と理解して他人に伝えることの出来る範疇は超えていた。だからあとは個人の好き好みの範疇なのかな?
私はこの人の作品が好き、マジ神。或いは一表現者の孤高な暴走…
一般人ではあるけれど、凡人としては今作はほぼ後者。
自分が造り手で後者的な発言を聞いたらゴミオーディエンスって吐き捨てるのかなぁ。
でもそんな表現なら無料の動画に見切れないほど溢れている気もするのだけれど…。

そういう啓蒙はもっとアカデミックな知見で自分なら得るのかな?
あらたに作るまでもなく、もう素晴らしい知性であふれているから。

どっちに振れる作家性なのかは静観もしたいけど、大衆性を甘んじて受け入れた表現者だと思っていただけに今回は困惑。
もっと置いていかれるかもしれないけれど次回作に期待!
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