TaichiShiraishi

あの日のオルガンのTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

あの日のオルガン(2019年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

素晴らしい実話の素晴らしい映画化。

戦時中に保育園で働いている時点で頭下がる。

最初は演技やカット割りが朝ドラみたいなテンションで、会話に変な間があって、大丈夫かこの映画?ってなった。特に最初に保護者集めてみんなに疎開の意見聞く辺りのシーンは演技ワザとらしくて辟易。

ただ、田舎に行ってからはだんだんとうわってなるようなシーンは減り、ほのぼのとしながらもそこかしこに戦争の影がある物語に引き込まれていった。

それでもほのぼのシーンは女性キャストたちや子供達の可愛さで癒される。特に大森靖子のおっちょこちょいな演技はワザとらしいんだけど鼻につかないちょうどいいバランス。あんまマジマジと見たことなかったけども、よく見るとめちゃくちゃ美形。

あの替え歌のつまらなさも昭和っぽくて可愛い。
オルガン弾けるから彼女に決まったんだろうけど、それ以上にキャラに合ってる。

それと対比してずっと気を張っている責任者を演じる戸田恵梨香もシャープな凛とした美しさが役にピッタリ。

ダメ保育士の大森靖子が怒りの乙女の戸田恵梨香の下で成長していく話かと思ってたらそうなってなかったのが良かった。

それよりも戦争に対して声高に反対は叫ばずとも、彼女たちの沸々とした理不尽への怒りが伝わってくる作り。

人が死ぬ時のギョッとするくらいの呆気ない省略描写が逆に怖い。
焼け跡に立ち尽くす戸田恵梨香のモノトーンの画面は美しく虚無的で素晴らしい。


そして女性監督らしく、戦火に耐える保育士たちをただ健気に描いていないのも好感。

みんな愚痴も吐けば、子供への負の感情も表し、限界を超えて死んだ顔も映す。

だんだんと惰性で仕事をこなしているような感じになっていくのがリアル。画面も色彩がなくなっていく。

死んだよりちゃんが好きだった片目のアイツが後半出てこなくなるのも突き放したような感じ。萩原利久良い演技。

そんな普通の人達がそれでもギリギリで子供たちを全員守りきったからこそこの実話を尊く感じるし、戸田恵梨香のラストの涙も染みる。

未だに生徒たち先生たちの交流が続いているみたいでほっこり。


子役の演技も邦画にしては比較的ワザとらしくなく良かった。特に親が死んだ健ちゃんが泣き叫んだりせず、状況を理解してないのか耐えてるのかどちらにも見えるのが良かった。

秀作です
TaichiShiraishi

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