マクガフィン

あの日のオルガンのマクガフィンのレビュー・感想・評価

あの日のオルガン(2019年製作の映画)
3.4
状況を冷静に見極めて、熱い決意と正しい理論のもとに保育園児の集団疎開を決行することに感心しきりに。国では手が届かない問題の背景が効果的で、戦争の悲惨さと同時に、何かと自己責任がまかり通る現代社会の警報に繋がる、さり気なさが良い。

戸田恵梨香の子供の生命を預かる重さや厳しさと、大原櫻子の子供寄りの天真爛漫さの対比が効果的に。特に、空襲が近づいている中で、何気ない日常を演出する役割を担う大原のポジションが秀逸で、過酷な環境下でも文化的生活の大切さが心の豊かさに繋がることが良い。戦時中の生活のイメージと真逆的な普遍的な日常のテイストにより、様々なことが際立つことにも。

兵役への召集令状である、赤紙の恐怖も想像で膨らませることや、色を無くした背景などの演出も冴える。しかし、重圧から解放された重要なシーンを全てセリフ説明することや、全体的な映像の質やトーンやテンポがドラマ的なことが惜しい。

子供の命を守ることは当然だが、それだけでなく笑顔を守ることの重要性が胸に深く突き刺さる。