エミさん

半世界のエミさんのレビュー・感想・評価

半世界(2018年製作の映画)
3.1
TIFFにて。阪本順治監督オリジナル脚本。39歳男性である同級生三人の友情を軸に、家族の繋がりや生き方への葛藤などが描かれている。

紀州にある小さな町。自衛官をしていたエイスケ(長谷川博己)が実家に帰ってきた。中学の同級生、炭焼職人のコウ(稲垣吾郎)、自営中古自動車販売のミツヒコ(渋川清彦)とは8年振りにの再会だ。最初は何か闇を抱え家内にふさぎ込んでいたが、コウの炭焼仕事を手伝ったり、3人で過ごしていくうちに、徐々にそれぞれの世界が露呈してぶつかり合い、やがてそれぞれの現実世界にも変化を起こしていく。

エイスケとコウが言い合いになるシーン。エイスケがコウに言う。「お前たちは世界を知らない。世界で紛争や何が起きているかを…」。コウは「こっちだって世界なんだよ…」と言い返す。印象的なセリフが胸に突き刺さった。

どれだけの世界を持とうとするか…。それは自由だが、持てる世界の数は同じではない。意思も情報力も境遇も能力も全く違うからだ。 3人の中では世界を少し多く持っているエイスケの世界も、小さな町で愚直に生きているコウの世界も、完璧だと言える世界では無いけど、この世に存在している大事な1つの世界だ。ミツヒコが劇中で言っていたように、各々の世界は死ぬまでずっと続く。私は穏便な毎日を送っているのに、時々、「こんな世界、終わっちゃえばいいのになぁ〜」と思ってしまうことがある。だからこのセリフを聞いて「そうか…。ずっと続くんだよなぁ。世界は集合体に過ぎないんだもんなぁ」と今更ながら再確認をさせられて、ズンと重苦しくなってしまい、結末を見て、どんな世界になっても生きていかなければいけない辛さに、映画のその後の世界と相まって更に物哀しくなってしまった。

相変わらず、良くないニュースばかりが騒がれている世の中だが、自分らしい自然体の世界がそこにあればそれで良いのでは無いかと思えた。