父、帰るの作品情報・感想・評価

「父、帰る」に投稿された感想・評価

僕の名はイワン(愛称ワーニャ)、ロシアの12歳の少年。僕の家にはパパがいない。兄のアンドレイ、ママ、おばあちゃんの4人暮らし。ママがとても優しいから、パパはいなくてもいい。
          *
夏休みのある日曜日、遊びから戻ると見知らぬ男が家にいた。12年ぶりに帰ってきたパパだ。がっしりした体格、ひげ面で口数の少ない男だ。ママもおばあちゃんも黙ったまま、この男がどこで何をしていたのか、そして何故今頃戻ってきたのか、誰も教えてくれない。
          *
“父”は僕たち兄弟を連れて明日からキャンプに行くと言った。“父”の車で旅行だ。
          *
一日中車で移動した後、火曜の午前、途中の小さな町に立ち寄った。公衆電話で“父”は何度も誰かに電話した。食事できる店を探すよう言ったのに、町を回った兄は寄り道してなかなか戻ってこなかったので、“父”は不機嫌になった。怒った“父”は怖かった。食事の後、勘定をして店から出た僕たちは、不良に絡まれて父の財布を奪われてしまった。“父”はその不良を探しだし捕まえて戻ってきた。そして、僕たちに、こいつを殴れ、仕返ししろと命令した。できないと答えると、根性なしめ!と言った。 “父”は強くて頼もしくもあるのだが、凄味があって怖い。
          *
「急に用事ができた。帰りのバス代をやるから家に帰れ」と突然“父”は言いだした。なんて勝手なんだ。「次の機会は12年後か」と毒づいたら、一緒に行けることになった。他の場所に行って3日間“父”が仕事をしたら、その後で釣りとキャンプだという。
          *
小さな港町に立ち寄って“父”は袋に入った何か大きなものを調達した。一体何だろう? その日は森の湖畔で釣りを楽しんでテントで寝た。父と僕たちは別々のテント。夜、テントの中で僕たちは“父”が何者なのか想像して話し込んだ。アンドレイはそうでもないようだが、僕は“父”が好きになれない。納得できる説明もせず有無を言わせず僕たちを従わせる。怪しいことをする不審人物かもしれない、僕たちは殺されるんじゃないか?
          *
水曜日は早朝に出発。僕は釣りをもっとしたいとごねたら、父は機嫌をそこねたか、途中の小川にかかる橋の上で車から下ろされた。ここで釣りをしていろと言い捨てて、僕を置き去りにして行ってしまった。人っこ一人いない野原に取り残された僕は途方に暮れた。帰って来てくれるはずだ、でも、戻ってこなかったら…? 雨が降り出してずぶ濡れになったが、そのまま橋にもたれて座ってただ待ち続けた…。 どれだけ待っただろう、“父”の車が戻ってきた。車に乗るとずぶ濡れの服を着替えろと命じられた。僕は心がかき乱れていた。「12年もほっといてなぜ今頃帰ってきたんだ!」と泣き叫んだが、父は黙ったままだった。
          *
目的地の湖に着いた時、空は快晴になっていた。そこからはるか沖合の無人島にいくのだという。岸に捨ててあった古いボートの船底にタールを塗り、調達したモーターを取り付けて快調に進んでいたのだが、途中でモーターが故障してしまってからは、僕たちはボートを漕がされる破目になった。クタクタになって島についた時は夜も更けていた。
          *
島には結局2日いただけだ。僕たちが釣りをしている間、父は島のどこで何の仕事をしていたのか分からない。その後の島での出来事について、僕は決して人には話さない。これは僕たちだけの秘密だ。だけど、はっきり言えることは、この1週間のことを僕たちは決して忘れることはないということ、そしてこの1週間の旅で、僕たちは大人になったということだ。
          *
         ***
…と書くと、「スタンド・バイ・ミー」のようなノスタルジックな雰囲気が出てきますが、映画は全く違う印象です。テイストは大分違いますが「フライド・グリーン・トマト」を思い出させる、かなり引っかかって心に残るお話でした。作品の制作年から逆算するとワーニャはソビエト崩壊の年1991に生まれた少年。この父親のキャラクターはソビエト時代の父親像の典型なのでしょうか。エピソードもほとんど回収されず謎は謎のままで終わります。秘密のベールで被われたソビエト時代そのものといった印象です。それでも人が全くいない広大で静かな湖水風景はとても美しい。フィンランド国境近くのラドガ湖という湖です。
shun

shunの感想・評価

4.3
答えはないが父親の演技と塔の上のセリフだけで泣くし、ラストもすばら。
こういうシャープでちょっと青くて、動くときは派手に動く撮影、画面好き。
アチェーツ…
ロシア語でお父さんという意味らしい。
なんかカッコいい…。


母親と祖母と暮らすアンドレイとイワンの兄弟のもとに、音信不通たった父親が12年ぶりに帰ってくる。
さっそく、その翌日から父親が2人の兄弟を連れて旅に出かけるも、行き先も告げないし、12年間の過去のことも何も喋らない。

全く言葉の足りない上に高圧的な父親との、世にも楽しく無さそうなロードムービーを延々と観せられるなんとも不思議で、でも目が離せない映画だった。


この旅路、父親からはなんの説明もない、しかし息子達は無条件に従わなければならない、口答えすれば引っ叩かれる。
この、いかにもロシアという国家の何か色々なものが象徴されてそうな父親の下での生き辛さを終始描くような作品かと思ったら、それよりももっと個人的な、幼い頃父親に捨てられて母子で苦労したというズビャギンツェフ監督自身の“空白の父親”に対する恨みと渇愛のアンビバレントな思いが爆発した作品だった。
ほとんど映像で書いた叙情詩のような感じかもしれない。


『ラブレス』で少年が失踪する前に最後に触った階段の手すりを“名残惜しそう”に映し取る印象的なカメラワークがあった。
そしてこの映画は父子のロードムービーの中で、その“名残惜しそう”なカメラワークが沢山溢れていた。


最後に映される父親の宝物は、実の父親の心の中にも“それ”があるはずだという監督のかすかな願望だと思うと切ないねえ。
shoepexe

shoepexeの感想・評価

3.6
いつからだろう、この手の親子ものでどちらかというと父側のほうの目線に寄せるようになったのは
福之助

福之助の感想・評価

3.8
謎多き父

12年振りに帰って来た父と兄弟が旅に出る話しです
父が強引で横暴なんです
これは子供に嫌われちゃう
「男親」にしか出来ない事を果たそうとしていたんだと思いますが、弟の気持ちわかるな

衝撃的なラストですが父は秘密を持ったまま…(箱の中身がとても気になる)
父の想いは伝わっている
本人達が気がつかない間に

兄は「男の子」から「男」へ成長してましたし
お兄さん役のウラジーミル・ガーリンさんは撮影後にこの湖を訪れた際に事故死しているそうで…

そんな事実も重なりやり切れない映画です
4

4の感想・評価

3.7
オスメント君みたい
独り

独りの感想・評価

-
2018.6.12

2018-79
Palpatine

Palpatineの感想・評価

4.7
自分の過ちから起きた取り返しのつかない事故ほど人の心に残るものはないと思った
父の人物像は魅力があったし、兄弟の微妙な力関係も面白かった

子供っぽくも大人っぽくも見えるイワンの子役がすばらしい
Zuidou

Zuidouの感想・評価

5.0
オフショット集かと思った最後のアレが本当は何なのか分かった瞬間にこの作品が映画という枠組みを乗り越えてきた感覚があった。二人兄弟、そして流石に12年も間が空いたことは無いけど父親があまり家にいない家庭っていうところが自分と被っていたせいで完全なる他人事として観ることが出来なかった。家族のようであり他人のようでもある「父親」といういまいち得体の知れない生き物と恐る恐る触れ合うときのあの変な空気。気まずいけど確実に嬉しさはあって、でもやっぱり少し怖い。感情の伝え方が絶望的に下手糞で昔気質なところまで自分にとっての父というものとリンクしていて、だからこそ最後の最後にやってきたスライドショーでフィクションとノンフィクションの境目が無くなってしまった気がしたんだと思う。『父、帰る』っていうか『父、と、発つ』だなあとか途中まで思ってたけど紛れもなく『父、帰る』だった。ダブルミーニングになっているように思えるのは狙ってるのか違うのか。「どうして帰ってきたんだ」の答えはきっと「伝えるためだ」なんじゃないか。ある種の原始的なイニシエーションを描いた映画なのかも知れない。
>|