木葉

芳華-Youth-の木葉のレビュー・感想・評価

芳華-Youth-(2017年製作の映画)
4.0
監督の思いがタイトルにまで込められている。若かりし頃、眩い青春を送った全ての人へ。
文化大革命の時代、毛沢東の全盛期、逝去、中越戦争、80年代90年代の中国、文公団(中国人民解放軍に所属し、各地の軍を慰問したり、軍の宣伝をする舞踊や演劇の才能に溢れたエリート集団)の軌跡を拾い上げる。
中でも主人公の二人、不幸な家庭環境から文公団に依拠を求めながらも、文公団でもいじめに遭う少女シャオピンと、彼女の味方に立ち、模範兵でただただ好青年のリウフォンに基軸が置かれる。
いじめに遭いながらも、リウフォンに淡い恋心を抱きながらも、唯一の支えであった父が亡くなりながらも、仲間たちに裏切られリウフォンが文公団を去ることになっても、シャオピンの真っ直ぐな思いは変わらない。
その表情、涙、迸る汗からジリジリと胸を締め付けられるほどだ。
彼女の心を奪ってしまった、中国ではタブーとされてきた中越戦争の描写も抜かりなく真正面から描かれる。
爆撃音、銃弾の数々、飛び散る血、目も当てられない惨状をカメラは追う。
リウフォンもまた戦地で兵士として苦悩していた。
煌めく青春から、国が変わりそれに翻弄されたエリート集団の思いをカメラは積む。
一方通行の恋、積年の想いを告白するも実らず散ってしまう気持ち、妥協したり、一瞬で人生の舵取りを決めてしまう呆気なさもきめ細かく描写されている。
政治に利用される文公団に所属しながらも彼らの青春、心までは奪うことは出来ない。
青春は痛く切なく眩しく苦いものであったとしても、青過ぎるが故の葛藤や苦しみは美しいものであるからだ。
どこまでも監督は澄み切った心の主人公二人に寄り添う。
先を読み取り上手く生き抜き、世渡り上手ないじめっ子たちよりも、不器用ながら、正直者過ぎた二人に。
その流麗過ぎて息もつかせぬ大河絵巻に心かき乱されるのだけど、
主人公二人に、真の心の豊かさを教わった気がした。
木葉

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