【記憶に残る芳しき華】
瑞々しく溌剌とした健康美に溢れる少女たち。画面に映る華やかさと美しさに、ウットリしてしまいます😍✨✨
〈軍の芳しき華たち〉
彼女らは軍歌劇団「文工団」(文芸工作団)の舞踏班メンバー。日夜、歌や踊りの厳しい練習に明け暮れています。
冒頭すぐの、凛として美しい舞踏班の練習シーンから一気に引き込まれます。見事に統制がとれた群舞。
彼女らも普通の少女。
年頃の娘らしく恋心を抱き、仲間たちとプールや水遊びをつかの間楽しみ、禁止された流行歌をこっそり聴く…若さが眩しい少女たちの青春は、青春映画としては王道すぎ…だけど、麗しの美貌もしなやかな肢体も眼福すぎて(みんな、「爽健美茶」CMに出てきそうな清楚な美女ばかり😍)、このまま2時間は続いても構わないと妄想してました😁♪(それって、映画としてどうよ?)
ですが、この映画は「在りし日の麗しの青春」を描く前半部分より、「文工団」を通して激動の時代(文化大革命、毛沢東の死去、中越戦争)を克明に描く後半部分が真骨頂であり、そこに製作陣の強い想いを感じました。
〈負を背負う人生〉
前半の瑞々しい青春群像、後半の生々しい戦争描写への変貌は『ディア・ハンター』みたいでしたね。
前半が美しく愛らしい世界だったからこそ、後半の激動の世にズタズタに引き裂かれる世界は、あまりに悲惨で理不尽で心苦しかったです😢
以下、詳しくなかったので、鑑賞メモとして調べてみました(もし違っている箇所があれば、教えて頂ければ😌)。
●文化大革命
中華人民共和国で1966年から1976年まで続き、1977年に終結宣言がなされた、毛沢東主導による革命運動(Wikipediaより引用)。
この革命のことは『さらば、わが愛/覇王別姫』、『芙蓉鎮』、『ラストエンペラー』にも描かれていましたね。
革命の名のもとに、(毛沢東に対立する)反革命分子は「労働改造所」に送られて再教育(彼女らの父親が送られてましたね)、逮捕、弾劾、処罰、自殺などにより「文革時の死者40万人、被害者1億人、あるいは40万人から1000万人以上」(Wikipediaより引用)という諸説もあります。
「毛主席語録」(赤い小冊子)や「文工団」は、謂わば"国家の犬"を作り、士気を高めるための洗脳の手段。
本作は"傷痕文学"ならぬ"傷痕映画"。
●中越戦争
中華人民共和国とベトナム社会主義共和国の間で、1979年に行われた戦争(Wikipediaより引用)。
本作で描かれる『ハクソー・リッジ』並の凄惨な戦争シーン(6分を1テイクで撮影)は、一瞬にして人体が木っ端微塵になるような手加減なしの描写。グロくて(※)、思いっきり怯みます😫💦
※苦手な方は、ご鑑賞を注意してください
蝶🦋が印象的。
●転落する人生
群像劇ながら、本作の中心人物になるのは2人。
17歳で才能を認められて入団したホー・シャオピン(何小萍:ミャオ・ミャオ)、「レイフォン(雷鋒※)二世」と称されるほど「文工団」の模範的存在だったリウ・フォン(劉峰:ホアン・シュエン)。
※中国人民解放軍における模範兵士とされる人物のひとり。無私の象徴として偶像に祭り上げられた。(Wikipediaより引用)。
「文工団」だった2人は、それぞれの事情で「文工団」を退団し、野戦病院と中越戦争にそれぞれ従事することになります。
悲劇的な人生を歩む2人は、激動の世の犠牲者的な存在であり、国の1番の功労者でありながら報われることはありません(PTSDの発症や傷痍軍人への冷遇処置)。
しかし、もっと根本的な問題として、何小萍の出自による深刻な諦念意識や内向的な性格、劉峰の自己犠牲的で奉仕主義な性格が転落人生を誘発しているように思えました。
「文工団」は憧れの職業であり、エリート集団でもあるため、アウェイ感漂う何小萍はなにかといじめの対象になり、徐々に心を閉ざしてしまいます。
劉峰は、自分を何でも犠牲にするので自ら「使い捨て」として生きてしまいます。つい自分より他人を優先してしまう。そして、その無理が後々に大問題に…
僕はそんな彼らの性格がだんだん嫌になってしまい、どんどん転落人生を選ぶ(不可抗力もありますが)姿がもどかしくて…
でも、ふと思いました。
彼らは彼らなりに精一杯、この世界に歩み寄ろうとしたけど…ダメだったのだ、出来なかったのだと😢
激動の世を生きるには、
彼らは、生真面目で不器用で純粋すぎたのかもしれない。
もし…
彼らが党幹部の子息だったら?
彼らの家が大金持ちだったら?
彼らがもう少し融通が利けば?
結果は違ったかもしれない。
そして、彼らが違う時代に生まれていたら?
そう思ったら、何小萍と劉峰の姿が非常に不憫で、無性に悔しかった😢
〈歴史を風化させない〉
苦手な"泣かせる"演出を除けば、自分が知らない悲劇の歴史をメロドラマとして身近に伝えてくれる良作と言えます。
中国の歴史を少しでも予習しておいた方が、物語を理解しやすいですよ😉
監督のフォン・ シャオガン(馮小剛)と、原作・脚本のゲリン・ヤン(厳歌苓)は共に「文工団」出身。
馮小剛は20歳の時に入団、美術を担当。厳歌苓は12歳の時に入団、バレエを踊っていました。
「文工団での生活は何年経っても忘れることはなく、多くのことを記憶から忘れ去っても、この時代のことは私の心に永遠に刻み込まれています。過去の困難な日々を思い出しながら、それは色鮮やかな経験として蘇る。
…年月を経て、映画監督として60歳を迎えた時、この作品を撮りたいと思いました。」(監督のインタビュー、パンフレットより引用)
エンディング曲は「絨花」
ポスタービジュアルが綺麗
パンフレットも綺麗な画像満載