♪ 深く 冥く 濁る
無疆の闇を 切り裂いて躍れ
己の信義 辿りて
スウェーデンの山奥。
男四人が立ち入った森は禁断の場所だった…という物語。
一見、とても硬派なんです。
紅一点というサービスはないし、主人公の抱えている苦悩は生半可なものじゃないし、ロケ地の森は本当に不気味だし、製作陣が“ガチ”なのは完全に伝わってくるのです。
だから、物語も不穏な雰囲気が満載。
本当に息苦しいんですよ。「酸素はどこだ」と肘を押さえて言いたくなるくらいに、漆黒の二酸化炭素が充満しているんです。
しかも、救いなんてありませんからね。
“絶望”とは「望みが絶たれる」と書きますが、本作こそが、まさに“絶望”。生きて帰れる…なんて考えられないほどの絶望を味わえます。
だから、ツラい。
本当に、ツラい。
…んですが。
極限に陥ると人間ってバグるんですよね。
いわゆる現実逃避に走っちゃうんです。
「これは壮大な舞台劇なのだ。全ては脳内で起きた事象なのだ。だから山中に蛍光灯があるのだ。だからチョッパーが出てくるのだ」と考えてしまったんです。
そうなると怖いものが怖くなくなります。
現実と妄想の境界線にぶら下がった“セカイ”は果てしなく澄んでいて、果てしなく深くて。地獄の地獄の地獄は天国の先に転がっている…に違いない、なんてこともあり得るわけで。恐怖は凡て笑いのタネにしか過ぎないのかも。
まあ、そんなわけで。
ストイックに作りすぎた所為で、微妙なゾーンに突入してしまった作品。恐怖の対象を具現化しても恐ろしさが変わらなかった…というのは見事だと思うんですが…それでも、やっぱりメリハリって大切だなあ、なんて思いました。
最後に余談として。
観光で青木ヶ原樹海に訪れたときに、樹海から少し外れた場所で迷ったことがありました。場所も分かる。地図でも対比できる。だけど、道が目の前にはなく、引き返すのも面倒くさい。そんな状況だったんですね。でも、あのとき、あのまま突き進んでいたら…きっと遭難していたことでしょう。やっぱり…森って怖い。