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穴を掘るのnetfilmsのレビュー・感想・評価

穴を掘る(2017年製作の映画)
3.8
 林の中を左から右にうな垂れるように歩く男の姿。抜け殻にでもなったかのようにスコップ片手に歩く男の背中はどこか寂しげで精気がない。帰社直前のオフィス内、男はデスクワークを片付けると無人駅へと足を走らせる。ホームに着いた男は吸い込まれるように森へと分け入る。虫の鳴き声の聞こえる厳かな森の中には、まるでデヴィッド・フィンチャーの『ファイト・クラブ』のような恐るべき地下世界を森の中に作り上げる。夜の間中、男たちの果てることのない怒号や罵声がこだまする。

 「闘うことに言葉はいらない。」男はいったい何を求めて森へ行くのか?何のために穴を掘るのか?昼間の住人には理解不能な世界にこそ男たちの存在価値はある。『マッドマックス』シリーズや石井聰亙(岳龍)の『爆裂都市 BURST CITY』のような男たちの熱狂と終わることのない地中探検、日常と狂乱の境目の無限ループ、心底燃えるライバルの登場。僅か16分にも満たない短編ながら、台詞による格闘はここにはない。あるのは泥に塗れた男たちの手とひたすら掘り進めた深い穴に他ならない。舞踏の世界とも親和性のある音楽劇は、地鳴りのようなグルーブを紡ぎながら大団円を迎える。
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