MasaichiYaguchi

ここは退屈迎えに来てのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ここは退屈迎えに来て(2018年製作の映画)
3.5
吉祥寺ココマルシアターで鑑賞。
山内マリコさんの同名連作小説集を廣木隆一監督が旬な若手俳優達で映画化した本作は、富山県が舞台になっているとはいえ、登場人物の誰かしらに自分の若い頃を投影して、切なくほろ苦い思いに駆られるのではないかと思う。
この作品は、橋本愛さん演じる「私」と門脇麦さん演じる「あたし」という2人のヒロインと、彼女らを魅了した成田凌さん演じる「椎名くん」を軸にして、渡辺大知さん、岸井ゆきのさん、内田理央さん、柳ゆり菜さん等の共演者が演じるキャラクター達が高校生だった2004年から2013年までの10年間のエピソードが順不同に繰り広げられていく。
つまりメインは3人だが、何かしら主人公達に関係する人物達のエピソードも描かれ、恰もそのエピソードがジグソーパズルのピースのように他のピースと繋がっていき、最終的には青春群像という一つの〝絵〟となる。
特にメイン以外のキャラクターで渡辺大知さん演じる「新保くん」は、物語の節目でアクセント的な役割を担っていると思う。
この作品では「東京」が憧れの場所、夢を実現する場所として取り上げられていて、東京生まれ東京育ちの私としては何とも面映ゆいというか、ちょっと居心地が悪いような気がする。
東京の生まれ育ちといっても、私の場合は小さな町工場や都営の団地が立ち並んだ下町で、この作品の登場人物達が思い描くような華やかさとか賑わいとは無縁だった。
だから私も10代の頃は、「ここじゃない」「それじゃない」「あなたじゃない」という思いを抱く登場人物達同様に、東京に居ながらも〝ここ〟とは別の場所に行きたいと願っていた。
今は「住みたい街ランキング」総合3位の吉祥寺に比較的近い場所に住んでいるが、だからといって「私」が何度も劇中で言う「成りたい自分」になれているのかというと、どうだろうか?
実際は終盤で「私」が呟いたように、何処にいても日々に楽しさや幸せを見出すことの方が大事なのかもしれない。
この作品で重要な役割を果たすフジファブリックの音楽、特に「茜色の夕日」とエンドロールで流れる主題歌「Water Lily Flower」が心に残ります。