Inagaquilala

ラスト・ムービースターのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

ラスト・ムービースター(2017年製作の映画)
4.0
東京で観逃していた作品を熊本で観る。熊本市の繁華街にある「Denkikan」は、札幌市の「シアターキノ」と並んで、自分の好きなミニシアターのひとつだ。作品は、バート・レイノルズの最後の主演作で、彼がかつては映画界の人気スターとして活躍していたが、いまはすっかり人々から忘れられてしまった存在である初老の男を演じている。タイトルといい、物語の内容といい、かなり彼自身に重なる部分も多い役柄を、かつての筋肉系の俳優でもあるバート・レイノルズ(彼の出演作品で印象に残っているのはポール・トーマス・アンダーソン監督の「ブギーナイツ」)が、シリアスに、そしてユーモラスに演じている。劇中には、彼の過去の出演作品なども流しながら、半分実話的な構成になっている。

物語は、バート・レイノルズが演じる、忘れられたスター、ヴィック・エドワーズが、ある小さな映画祭(とは言ってもほとんど街のサークルのような集まり)に招待されるところから始まる。ひさしぶりにそういうイベントに招かれたということで、戸惑いながらもやってくる主人公だが、待ち受けていたのは、ほとんどアマチュアの人間たち。宿泊は街道沿いのモーテルで、映画祭とは名ばかりの愛好会のような集まりに、落胆する主人公だったが、あることをきっかけに次第にスターになる前の昔の自分に目覚めていく。

バート・レイノルズがこの世を去る直前に、この作品に出演していたことは、まさに奇跡とも思えるような出来事だ。監督は「デトロイト・ロック・シティ」のアダム・リフキン、よくバート・レイノルズでこの作品を考えたと思う。バート・レイノルズは2018年の9月に死去したが、この作品が発表されたのが2017年、生きていれば「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」にも、彼は出演する予定だったという。
Inagaquilala

Inagaquilala