MasaichiYaguchi

ダイ・トゥモローのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ダイ・トゥモロー(2017年製作の映画)
3.8
「マリー・イズ・ハッピー」のタイ映画の新旗手ナワポン・タムロンラタナリット監督の最新作は「死」をテーマに、監督が見聞きした死亡事故や事件を再現するドラマと、人々が死について語るインタビューとで構成されている。
映画の冒頭、我々の人生を刻む“時間”が印象的に出てくるが、毎時、毎分、毎秒、人が産まれるのと同様に、世界の何処かで人が亡くなっている。
そこから浮かび上がるのは、三法印の一つ「諸行無常」を根本とする仏教の「死生観」。
映画の再現ドラマに登場する人物達は、それまで元気だったのに様々な要因で呆気なく死んでいく。
ただ本作は「死」が興味本位にならないように直接的な表現は取らず、独特な手法で「喪失」を描き出す。
本作を観ていると、ここ25年間に日本で発生した大規模災害、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、平成30年7月豪雨によってもたらされた掛け替えの無い多くの人命の喪失や、無差別殺人、相次ぐ高齢者の自動車運転による死傷事故等を思い浮かべてしまう。
これら天災や人災での犠牲者の殆どは、平穏に幸せに暮らしていた日々を突然、ある意味不条理に奪われてしまっている。
本作は、この何時訪れるかもしれない「死」を描くことによって、逆にどう「生きる」か、どう「生きねばならぬ」かを我々に突き付けているような気がする。