囁きのwhisper

クリシャの囁きのwhisperのレビュー・感想・評価

クリシャ(2015年製作の映画)
3.6
「イット・カムズ・アット・ナイト」が全く救いのない正真正銘の鬱映画で見応えがあった、トレイ・エドワード・シュルツ監督のデビュー作。

監督自らの体験をベースにした地獄のファミリードラマというと、真っ先にアリ・アスター監督が思い浮かぶ。
アリ・アスターは、自らの体験をホラー等のジャンル映画に落とし込む作風だが、今作は監督自ら出演し、その他出演者も監督の親戚であるということで、より嫌な生々しさを感じる。(というか、よくこんな地獄の映画を家族ぐるみで作る気になったよ)

冒頭こそ、親戚たちに暖かく迎えられるクリシャだが、パーティの準備を進めるにつれ、チャカポコチャカポコと不愉快なBGMで神経を逆撫でされ、クリシャの過去に問題があったことも示唆され、不穏さが高まっていく。

そして、息子との和解が上手くいかないことが分かると、ついに彼女はアルコールに手を出し、例のチキン事件へ…

このシーンは、シネマスコープサイズへの移行とスローモーションの多用、そしてBGMの組み合わせによって、一線を超える彼女の行動に期待感が高まる非常にドラマチックな演出。

本当に困っているときには、誰も助けてくれない。それでも、家族という関係性からは逃れることができないという、まさに地獄のファミリードラマと呼ぶにふさわしい作品だった。
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