幕のリア

ヘレディタリー/継承の幕のリアのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
3.7
アホが感染る、なんて言う。
他人ならまだしも、それが家族だったら治癒は望むべくもない。
なりたくなかった自分の姿を自覚したとき、言いたくもない忌まわしい言葉を口にしたとき、驚きもなく、かつてそんな情景に遭遇した事を忌々しく思い出したことはないだろうか?

ミニチュアハウスに注がれる視線。
スクリーンの中の模擬人生に注がれる我々の視線と重なる。
ミニチュアハウスを作成する母親。
それはいわゆるジオラマでなく、人生のある一場面を切り取ったディテールの再現。
そこには希望も未来もない。
圧倒的な空虚と諦念が充満しており、負のベクトルの強さがギャラリーに並べるだけの色気になっているのかもしれない。
そして、ミニチュアを眺める登場人物とスクリーンに魅入られる我々の背中にはもう一次元上の存在の視線が張り付いてそうだ。

ホラー、サスペンス、スリラー、映画としての本作のフレームワークの構成はそんなに重要ではないと思いたいし、正直あまり感心しない。
監督が描きたかったのは、因習の禍々しいまでの強固な呪縛だろうとは思う。

A24が放つ問題作にして充分邪気に溢れる作品ではあった。
ただ、膨らみ過ぎた期待を大きく上回ることはなかったし、人間の生理が拒むような邪悪極まりないシーンが一つでもあったかと言うと正直少し物足りなかった。

〜〜

ジュマンジのアレックス・ウォルフ君のいたぶられっぷり。
正体不明のミリー・シャピロちゃん。
顔面七変化トニー・コレット。
同情を禁じ得ないお父さんガブリエル・バーン。
キャスティングは見事。

2018劇場鑑賞106本目
幕のリア

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