アタフ

ヘレディタリー/継承のアタフのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.7
今まで数多くのホラー映画を見てきましたが、この映画以上に怖い映画はほとんど無いと思います…

「今世紀で一番怖い映画」という三宅隆太監督の言葉も嘘ではなく、映画館でここまで恐怖に打ち震えたことはありません。見ている最中も落ち着ける暇が全くなく、不安と緊張が延々と続く127分でした。

ホラー映画は好きでよく見ています、例えばジェームズ・ワン監督の『インシディアス』とか『死霊館』なんかもかなり怖い映画だと思っていましたが、この『ヘレディタリー継承』はもはや次元が違い、『インシディアス』や『死霊館』はこれと比べると、楽しい楽しいエンターテイメント映画だったなと…
上記の2作が「観客を楽しませるための怖さ」だとしたら、こちらは「観客を不快にさせるための怖さ」だったと思う、ラース・フォントリアーやミヒャエル・ハネケの作品を参考にしているようですが、まさにこの2人の監督の作品のような"不快さ"がこの映画には満ち溢れていました。

映像、音楽、演出、どれもこちらの恐怖を極限まで駆り立てるもので、アリ・アスター監督はこれが本当に初監督作なのか?と疑いたくなるほどクオリティが高い。特に私が嫌だったのが、心臓の鼓動を少し早くしたような「ドクドクドクドク」と鳴る音楽、これむっちゃ不安になって嫌だった…
また、大きな音でこちらを驚かせる演出がほぼ無かったのが素晴らしい。

序盤は「なんだか分からないけど不安だな…」ぐらいだったのが、中盤のあるショッキングなシーンを境に地獄のような展開になっていく。この一連のショッキングシーンが完全にトラウマになってしまいました…この展開から私は平常心で見ることが出来なくなってしまいましたよ…
このシーンについてはネタバレになるので、コメントに書きました。
因みに妹役のミリー・シャピロの怖さは何なんでしょうか…!?失礼かもしれませんが、素の顔が怖すぎますよね…
私は『トリハダ』シリーズの笹野鈴々音さんと同じような怖さだと思いました。あの人も怖いんだよな…

終盤に差し掛かるにつれ、見ることすらできない強烈なシーンが続く。「もう嫌だ、もう嫌だ」と思いつつも、容赦なくスクリーンは強烈なシーンを映し続け、こちらの精神を削ってくる。母が首を…のシーンはあまりの展開に思わず目を塞いでしまいましたよ…

そして、この映画の強烈なラストシーンには、もう魂を抜かれそうな感覚になった。なんなんだ、この予想の遥か上を行く展開は…
このラストにはイングマール・ベルイマンの『狼の時刻』のあるラストシーンを思い出した。この世ならぬモノを見てしまったという恐怖と興奮、私はこんな映画を見てしまって良かったんだろうか…
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