バートロー

ヘレディタリー/継承のバートローのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
5.0
「どエライ目には遭うが(擬似)家族のパワーで押し切る」と言った最近の大当たりホラー作品には紛れもなく血の繋がらなくとも家族、友人、仲間を大事にという人類愛的な思いが込められているのだが、今作はそのトレンドとは一線を画した「家族で起こりうる最悪を詰め込んでみました」と考えうる限りの邪悪さが詰まっている。怨念の一作。

家族と言えども一線を越えれば内戦となるのが世の常だが、この一線を越えるまでの流れがあまりにも巧みで、全く逃れられる隙がなくて、禍々しくて、残酷で本当に良かった。毒親などという生易しいものではない、決して継承されてはいけないものがここにはある。史上最恐のホラーとは言うが、今作の魅力は怖さ以上に脚本、構成に負のエネルギーを感じられた。

リピート必須と言えるほど最初から随所に張り巡らせられた伏線、細かい小道具に至るまで全てが丁寧で、ある種の美しさほど感じられるぐらい絶対的でもう参ってしまった。役者も気味の悪い少女、神経質なママ、死んだおばあちゃんというどれも並みのホラー映画なら主役を張っている女三枚看板だが、これが三者三様に色々と狂っていて文句なし。名優トニ・コレットの迫真の演技はこの物語の根幹を担った。ここ数年見てもとてつもなく酷い目に遭うマリファナ大好きボンクラお兄ちゃんはパトリオット・デイ、リメイク版ジュマンジでも酷い目に遭うアレックス・ウルフ。これからも酷い目に遭う若手俳優としてどんどん活躍して欲しい。