グラビティボルト

ヘレディタリー/継承のグラビティボルトのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
3.5
ド頭のドールハウスを使ったウェス・アンダーソンっぽいのだがウェス程ではないスタイリッシュなショットに逆にホラー向きではないお洒落さを見出だしてしまって心底心配にはなったし、オチは決して悪くないんだが恐怖の種類を決めつけ過ぎている気がする。
後、ドールハウスが母親の人物紹介や内面の変化を捉える物でしかなくてドールハウス自体がホラーになる事がない物足りなさがある。
只、一瞬何かの間違いに見えるフレアが画面のそこかしこにチラつきだしてからは「回転」のフェンス向こうにいる幽霊、エクソシスト3の天井張り付き婆、
一見穏やかに見える「ローズマリー〜」風婆などそこそこホラーを観てると喜べる細部をねっとり魅せる愚直な映画に見えてくる。
何よりも惹かれたのは息子さんのパートで彼に関しては怪異のシステムに一番遠いが故に「巻き込まれ」の要素が強くなっている訳だがその彼を演じるアレックス・ウルフの「身震い」が恐怖映画としてのこの映画を格調高いものにしてると思う。
理屈や常識ではあり得ないものを認識、視認してしまった時の身体の震え、息の詰まりから恐怖し過ぎてボウっとしてしまう教室のシーンまで映像技巧ではなく役者に託した恐怖演出が多彩に織り込まれてる。
このプロット自体役者の佇まいの微細さ無しには成立しない。
クライマックス、息子が恐怖のあまり窓をクラッシュする場面も必見。