Yoshishun

ヘレディタリー/継承のYoshishunのネタバレレビュー・内容・結末

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

本国アメリカの批評家からは絶賛され、観客からはブーイングの嵐が巻き起こったという曰く付きの問題作。深読みしがいがある難解な内容は確かに批評家向きなのかなって思ったり。

タイトルの"hereditary"=遺伝性であるらしく、ポスターだけを見ると少女に悪魔的な何かが遺伝し、それが恐怖の種になるかと思っていました。ところが、中盤であっと驚く展開、クライマックスまで安定した緊張感の下、精神的不安や恐怖を煽りまくってきます。

本作はホラーでありながら、確かに音による驚かせ方があるものの、他のホラーにはない特徴が存在。よくあるホラー映画の驚かせ方として、唐突に大きなBGMを流すことにあります。ただこの場合だと突然の音にビビるだけで、幽霊や怪物、もしくは殺人鬼といった凶悪な人間のビジュアルには全く驚かないことがあります。
しかしこの映画、大きなBGMで驚かせることはしません。その代わり、普通の効果音でビビらせてきます。例の「コロッ」に始まり、足場の悪いところを歩く音、後ろを何かが静かに通り過ぎていく音、鳩が窓に当たる音、日常で作り出せる音の数々が逆にリアルでおぞましい。聞き慣れた音でさえも気持ち悪く思えてくる。

それを含めて恐怖演出が過剰すぎず、適度に恐ろしい映像を見せたりするから、終始バランスの取れた恐怖映画という印象でした。

演出は巧みだと思います、すごいです。

ただ、☆3.4にしてるからお察しとは思いますが、そんなにハマりませんでした。パンフレットの解説とか読んでも「ふーん……」の一言。

結局祖母が所属するカルト集団が原因みたいですが、難解な内容ながら案外オチはつまらなく感じてしまいました。伏線回収の仕方に全然爽快感がなく(ホラー映画だから仕方ない?)、あの死亡シーンまでは結構退屈でした。音や映像は凝ってる分、ストーリーが物足りない。

最後の儀式は呆然としましたし、カルト集団の目的が悪魔パイモンを男性の体に取り込むことであることはわかりますが、悪魔映画らしからぬファンタジーな描写には正直ついていけませんでした。

まあ内容は賛否両論とまで云われましたし、最近のホラー映画では滅多に味わえないような恐怖感覚やそのらしからぬ描写が逆に気色悪く思えるのもわかります。ただあんなに絶賛されてると多少はより緻密に作り込まれたものを期待してしまいますが、感性の問題か、特別来るものが無かったです。

捉え方や感性によって評価がかなり変わってくると思います。役者や恐怖演出は今年ベスト級だとは思いますが、それ以外は擁護しがたい。色んな意味で問題作です。
Yoshishun

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