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ヘレディタリー/継承のtouchのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.1
"地獄の門が開く"
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今年最後のトラウマ級ホラー、降臨。
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米国では"21世紀最高のホラー映画"との呼び声も高い本作。
製作は新進気鋭の映画スタジオA24。またお前か。
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人間の心のジメジメした暗部を描き出す芳醇なイヤミス
じわじわと煽ってくる王道の古典的オカルト描写
緻密な伏線と巧みな演出によって構築された、一分のスキもない完璧な悪夢。
最高で最悪、クラシック・ホラーの流儀を"継承"した正統派ホラーの傑作です。
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とにかく演者の恐怖演技が強烈。
特に母役:トニ・コレットの表情は凄まじく、夢にまで出てきそうなレベルのおぞましさ。
夕食のシーンでの邪悪なヒステリック・ブチ切れは今年ベスト級の演技で圧倒されました。
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祖母の死をきっかけに狂いだす日常
次第に明らかになる”家族の根底に渦巻く闇“
不気味なオカルト信仰が一家を侵食していき
やがて精神に異常を来たしていく…
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近作の「クワイエット・プレイス」や現在劇場に掛かっている「来る」など
最近のホラー映画の潮流として「家族」をテーマにした作品が目立つ。
本作も例に漏れず「家族」の物語ではあるが、かなり異質な作りに。
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協力して恐怖に立ち向かう姿で”美しい家族の絆”像を提示するでもなく
災いを招いた人間の愚かさを通して”信賞必罰”のメッセージを提示するでもなく
ただひたすら家族が崩壊していく悲惨な展開を見せ付けられる。
なるほど、ミヒャエル・ハネケ作品っぽくもある。
「親子」という揺るがない血縁、強烈な因縁によって結び付けられてしまった”逃げ場のない呪い”、これが本当に恐ろしい。
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舌を鳴らすクリック音ひとつであそこまで震え上がらされるとは…
これが長編初監督というアリ・アスター監督、今後も注目です。
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