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ヘレディタリー/継承の655321のレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
3.6
『キャリー』『シャイニング』『ローズマリーの赤ちゃん』
そういったホラー名画達が脳裏を掠める。
こうして並べてみると、「恐怖」とは「コントロール出来ない」ことと密接に関わり合っているんだな、と思い至る。

『ヘレディタリー/継承』は“あの瞬間”まではコントロール出来ていたのだ。
中盤で起こる、まさしく転換点といえる“あの瞬間”。
なんとなくこうなるだろうと予想していた展開はあえなく断頭台の露と消え、手中に収めていると心得ていたはずの物語はふわりふわりと明後日の方向に漂って行く。
予想出来ない物語に、頭を失くした私の胴体は右往左往するしかない。

【加速する制御不能】

コントロール出来ない自身を抱え、家族と、自分と、向き合うことを怠けてきた一家。
事態は完全に両の手から離れてしまった。
あとはもうされるがまま激流に飲み込まれていく。
そしてその「コントロール出来ない恐怖」が「コントロールされていた恐怖」に潮目が変わる時、恐怖は次のステージに移る。
人智を超えた呪縛。
そこに自由意志など存在しない、箱庭で操られている駒に過ぎないのだ。
それは全てが徒労に終わる呪縛。

“運命”の主が悪魔でないことを祈るばかり。
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