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アンセイン ~狂気の真実~のrage30のレビュー・感想・評価

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「突然、精神病患者にされて、強制入院させられる」…という事は誰しもに起こり得る事で、身近な恐怖として感じられました。
感情的に振舞えば振舞う程に、病んだ人間として見られるわけで、この逃げ場のなさが恐ろしい。
「自分だったらどうするか?」と考えながら見てしまいましたね。

そんな強制入院される恐怖に加え、本作には「ストーカーが入院先で働いている」というスピンが加わります。
回想シーンにマット・デイモンが登場して、ストーカー対策を延々と語るシーンがありますが、ストーカーに狙われ人生を狂わせられる事と強制入院させられる事は、どちらも不条理で本質的には近しいのかもしれません。

面白いな~と思ったのは、ストーカーの男が主人公に対して言う「今の君は本当の君じゃない」という台詞。
普通の人間が病んだ人を見た時に思うのと同じ様に、ストーカーは被害者の事を病んでいると解釈するのだなと。
ストーカーの心理を追体験するみたいで、なかなか興味深かったです。

あと、もう1つ本作のポイントとしては、全編がiPhoneで撮影されている事でしょう。
序盤はクリア過ぎる映像に安っぽさを感じたのですが、中盤以降はほとんど普通のカメラと変わらない印象を受けました。
おそらく病院の薄暗い照明が、映像に深みを与えていたのではないかと、素人ながらに思います。

正直、画質面でiPhoneを使うメリットはあまりなくて、それよりもカメラ本体の小型軽量性・機動性にこそ、iPhoneを使うメリットがあるのかなと。
本作はカメラが接写するシーンがやたら多いし、変なカメラ位置から撮影されたショットがあるのですが、これらはiPhoneだからこそ撮影出来た映像だと思うんです。
しかも、接写したり、カメラ位置を変える事で、映画に緊張感や違和感を与える事に成功している。
本作に関しては、iPhoneを使う意味をちゃんと考えてるし、iPhoneだからこそ撮れた作品と言えるかもしれません。


いろいろと語りましたが、基本的には気軽に見れるサスペンス・スリラーです。
そんなに難しい話じゃないし、90分弱とサイズもコンパクト。
iPhone撮影に興味を持って見てみるのも良いと思うし、ソダーバーグ監督最新作として見るのも良い。
大傑作とまでは言いませんが、ちょっと小腹が減った時に見るジャンル映画としてはオススメですよ。
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