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5時から7時までのクレオのmendeのレビュー・感想・評価

5時から7時までのクレオ(1961年製作の映画)
4.0
『アニエスによるヴァルダ』で「予算の関係でパリでロケをせざるをえなかった」とのことだったので、パリの街を見る目的で地図を片手に見てみた。旅に出られない今、パリを感じられる「パリ映画」でもあると発見。こういうとき気軽に見られるサブスクって便利。

画面をよく見ると建物の住居表示などから場所がわかる。最初はリボリ通りからスタート。ガン検査の結果待ちで不安でならないクレオは、気をまぎらすために欲しくもないのにショッピングをする。タクシーで自宅へ。「ユイジャン通りへ」と行き先を告げ、ポンヌフ(たぶん)でセーヌを渡ってリュクサンブール公園の脇を通って自宅へ。一気にシネタマリスのあるダゲール通りの徒歩圏内へ。ここからは左岸13、14、15区しか出てこない。本当に自分の生活圏内で撮影したんだな。
カツラをとって仕事関係の人と会うのをやめて街へ出る。エドガーキネ通りをふらふら。モデルの友人に会い、モンパルナス駅付近へ。無声映画(豪華出演陣)を見てタクシーでラスパイユ通りを南下し、モンスーリ公園へ。男と出会い、今度はバスでイタリア広場を経てサンマルセルで下車。ピティエ病院で結果を聞く。最後に乗ったバスは67番で今も同じ67番としてほぼ同じルートを走っている様子。モンパルナス駅は高いビルになって変わっているけれど、基本的に通りはそのままで住居表示などからこの程度は足取りがたどれて楽しかった。フィクションでもドキュメンタリーのように主人公の軌跡がたどれるように作ってあるんだな。最初に見た時は、自分がパリに行く前だったので、何が何やらだったけど。

検査結果を待つ間、気が気でなく、周りの人を困らせたり、イライラしたり、不意に落ち込んだりするクレオ。きっとこんな状況って誰にでも起こることだろう。でもこの間に覚悟ができていたのか、もうこれ以上気をもまずに治療に専念すればいいと開き直れたのか、最後に落ち着いた表情を見せた彼女に希望を感じた。
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