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5時から7時までのクレオのtetsuのレビュー・感想・評価

5時から7時までのクレオ(1961年製作の映画)
4.3
「映画は時間だ。」

医者の診断から、自分の命があとわずかであることを悟った女性・クレオ。
これは彼女が町を駆け巡る2時間の物語。

僕は今、大学で映画を学ぶゼミに所属している。そこで先生が「映画は人間の『死に至る過程を切り取ったもの』」と言っていたけど、本作はまさにそれだなぁと。

僕たちが「死」に直面した時、いつも見ている風景が違う景色に見えたり、ふと生命の誕生に神秘を感じたり、人間は「死」を意識した時に初めて「生」を実感することを改めて感じさせられた。

また、画面上のゆりかごに合わせて揺れ動くカメラや、カラーと白黒の使い分けなど、映像的な遊び心に溢れているところも印象的な作品だった。
特に、クレオ視点で描かれる物語と彼女に視線を注ぐ街の人々との対比が浮かび上がらせる「見る/見られるという関係性」が興味深く、デッサンのヌードモデルをする友人との遭遇によって、彼女の「視線」に対する価値観が変わっていく様が心に残った。

作品を進める視点は確かに彼女でありながら、まるで登場人物全てが主人公の様にも感じられる"あるテロップ"も見事で、ただただ愛おしいクレオとの時間をもっと過ごしていたいと思う作品だった。
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