けんたろう

5時から7時までのクレオのけんたろうのレビュー・感想・評価

5時から7時までのクレオ(1961年製作の映画)
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大きな鼻穴がチャーミングな、歌い屋さんのおはなし。


撮るだけで画になる、芸術の都パリ。
眼福なこの街を駆け巡ったクレオ(コリンヌ・マルシャン)の2時間は、人生というビッグスケールにおいては短いものに感じるが、この日の彼女にとってはあまりにも長いものだった。

思えば、だいたいの長編映画も2時間という長さである。今作が人生のうちの2時間を切り取ったのは、それが関係しているのだろうか。
まあそれは分からないが、5時から7時まで、時刻毎に変化する彼女のあり様を捉えた2時間は濃密で映画的であった。


ここで忘れてはいけないのが、突然ご登場のアナ(アンナ・カリーナ)だ。
持ち前のキュートな趣きで映画にもう一凛の花を添えるのだが、これを可愛いの一語で終えるには勿体ない。見方によっては不幸も幸、幸も不幸であり、黒眼鏡をかけるか否かで世界の見え方は大きく変わるということを端的に表しているからだ。
そんな彼女の喜劇はとても痛快であった。


でもやっぱり主人公はクレオであり、課題は癌という病気である。
その病は、環境からの脱却と新たな出会いによって、転じた。
これは「病は気から」とういう言葉によるものなのか、それとも映画にしかできない業なのか。
結論付けるのは難しく、どちらが正しいのかは分からないが、それがどうであれ、5時から7時までに大きな変化をしたクレオの物語はたいへん面白かった。