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洗骨のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

洗骨(2018年製作の映画)
4.3
お彼岸なので。
沖縄の粟国島にある風習を初めて知った。風葬後5年目に死者の骨を身内で洗い納骨する。これで死者はあの世へ行ける。亡くなってもすぐにはあの世へは行かない。この世とあの世の間には時空間の距離がある。

死者を見送るための生者の心の準備期間のようでもあった。身内の魂と肉体を愛おしむ家族の姿に心が震えた。故人を悼むには時間が要る。洗骨で、変わり果てた姿を見て、生者は改めて身内の死を受け入れる。

キツい。でも、死者の弔いを身内の手で手間と時間をかけて行う。「死」は「生」と続いている「生の一部」なのだと、死者は身をもって生者に教える。

洗骨は生きている者の心を洗うことでもある、と劇中で長男の筒井道隆がいう。

祖先崇拝につながる綿々とした死と生の営みに、忘れていた原初の死生観がよみがえってくる。

病院と連携した葬儀社により、段取りよく、つつがなく葬儀を行い、斎場の混雑具合に合わせて火葬するシステマチックな見送りは、生と死を断絶し、その間には三途の川を想像する隙間もない。現代は、死はマニュアルに沿って処理されていく。

粟国島では、あの世とこの世は往き来できる。墓地に入る道は途中からあの世になる。地続きのあの世。

ストーリーは母の洗骨をするために集まった家族がすったもんだの末に洗骨によって家族の絆を取り戻していくお話。

・妻が亡くなったことを認められずさらに自暴自棄になっていく夫(奥田瑛二)。
・長男の妻が中心となって洗骨する風習に耐えられず離婚された息子(筒井道隆)はだらしない父が許せない。
・店長(鈴木Q太郎)の子供を未婚で身籠った娘(水崎綾女)は狭い島では噂される。
・そんな家族を強く牽引する伯母(大島蓉子)。

ガレッジセールのゴリが監督、脚本。随所にクスっとした笑いが入っています。

お彼岸にぴったりの作品で観てよかったです。味わったことのない感覚でした。
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