カポERROR

パッドマン 5億人の女性を救った男のカポERRORのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

過去、これ程レビュアー泣かせの作品テーマがあっただろうか?
インドで女性生理用ナプキンを作りまくって社会を変えた男の波乱万丈の物語…ふざけたコメントなどしようものなら即炎上必至だ。
しかし、私の中では、かの『RRR』や『きっとうまくいく』を抑え、ボリウッド作品における最高評価なのだから、語らない訳にはいくまい。
覚悟を持って感想を綴る。

まず、少しだけかつてのインド事情について触れておきたい。
2000年当時インドでは、女性の生理現象は“穢れ”とされ、更にそうした女性が触れた物は不浄だという思想が根付いていた。
そのため、生理期間中の女性はベランダに追いやられ、屋内にも入れない逆軟禁生活を強いられる。
しかも患部にあてがう布は、極めて不潔な使い回し品…と女性にとってあまりにも過酷な現実が横たわっていたのだ。
一方日本では、初潮を迎えた女児を赤飯炊いて祝ったのだから、インド人がこの格差を知ったら、国際問題になっていたかもしれない。

さて、肝心のストーリーだが、本作の主人公、脳筋男ラクシュミは、新婚ホヤホヤの最愛の妻が、月に1回、前述のような過酷な状況に直面していることを知り、自ら「清潔で安価な生理用ナプキンを作り、女性の生活を変えてみせる!」と決意する。
と、そこまでは愛ある行動として理解も出来るのだが、ここから先、脳筋男ラクシュミはHENTAIモードに突入する。
自分の手作り試作ナプキンが、漏れないかどうかを試すため、自ら女性用下着をはいて、家畜の血を詰めたゴムボール製の人工子宮を身につけ、自転車に乗って疾走するのだ。
結果…人工子宮があえなく破裂し、ズボンは血だらけに。
パニックになったラクシュミは、何を血迷ったのか、ガンジス川に飛び込んでしまう。
それを見ていた村人たちは「聖なる川を汚した」とラクシュミに罵声を浴びせかけ、妻の兄は「妹に恥をかかせた」と、大激怒。
彼女を実家に連れ去ってしまうのだった。
もはやコントでもお目にかかれないおバカ展開だが、信じられないことに本作品、れっきとした実話ベースである。
げに恐るべしインド人。

ここまでの解説で、何故私が4.3ものハイスコアをつけたのか訝しむ方もおられるだろう。
だが、驚くことなかれ。
この作品、上述の地獄絵図の如き前半戦から、後半疾風怒濤の神展開で、スーパーサクセスストーリーに転じるのだ。
この男、愚直にも程がある。
圧巻なのは、ラスト。
ニューヨーク国連総会に招かれ登壇したラクシュミの講演。
私は、この脳筋男のカタコト英語の演説に、完膚無きまでに叩きのめされたのだった。
感動?そんなありきたりな一言では到底表現し得ない…しいて言えば、それは【感情のビッグバン】だった。
強い信念は、人の心をこんなにも揺り動かすのだ。
一体彼は何を語ったのか…それは敢えてここでは伏せておこう。
【感情のビッグバン】は是非本作を鑑賞して、皆さん一人一人が体感して頂きたい。

テーマや展開が斜め上を行くものだけに、好き嫌いが分かれるタイプの作品であることは否めないが、私にとっては間違いなく特別な一作である。
興味のわいた方は、是非御覧あれ。
カポERROR

カポERROR