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パッドマン 5億人の女性を救った男のERIのレビュー・感想・評価

4.3
これが実話だと言うのだから刺激を受けないわけがない。東京国際映画祭でも招待されていた作品なんですね。公開されたので早速、劇場にて。

スパイダーマンでもバッドマンでもないインドの女性を救う「パッドマン」のお話。

今日は特別心が不安定なのか、最初から最後までいちいちラクシュミの優しさに泣けて泣けて仕方がなかった。インド映画だからか137分とやや長めだけど、冒頭から音楽も良くって合間ミュージカル的なシーンもあったりと比較的みやすいと思います。

インドの小さな村で新婚生活を送るとラクシュミは奥様のことが大好きで仕方ない。小さな事でも困っていたらどうにか楽になるように知恵を絞ってはプレゼントをしたり、自転車の後部席に座る椅子を作ったりと愛情たっぷりの日々。

ある時、突然奥さんが外で寝食を始めてラクシュミはびっくり。話を聞くと生理になったというのだ。村の風習で生理は穢れだと考えられていた。まだまだこういう思想は国によってはあるんだろうな。かく言うインドでも2000年を過ぎたこの時代に、忌み嫌われることとして扱われていた。日の当たらない雑巾にもならなそうな汚い布を生理用品として使っていることに驚きと心配を隠せなかった。

衛生的に清潔でない状態のせいで病気になってしまうかもしれない妻に、このまま見過ごしていたら自分を許せないだろうと生理用品を作り始める。

周囲に全く理解されず、なんだったら最愛の妻からも恥ずかしいと言われ喧嘩になったり、距離を取られても、それでも自分の信念に従ってお金も教養もなくても、頭を使って考えて行動する姿にただただ感動と勇気をもらいます。

そして前を向いていたら、さまざまな出会いがちゃんとあるんだなぁと人生の妙も感じられます。工場で働いていた時に耳に届いた言霊で、はっと気づくことがあって実践してみたり(それで最愛の奥様と離れることになってしまうけど)、お金もないけど学びたいと教授の下働きで学ぶチャンスを狙っていたらその子供からGoogle先生を教えてもらって知識を得たり、教授から製造機を教えてもらったら買うのではなく作ってみると決めたり、試作品の感想を必ず聞きに行ったりと、前に進むために自分の足でちゃんと歩く。本当に素晴らしい。

2人の女性が出でくるのだけど、1人目は社会に対する疑問に気づかせてくれたラクシュミの最愛の妻。保守的で慎ましく村のしきたりに倣って生きる彼女は、変わりゆく夫を必死に理解しようとしていた。恥ずかしい思いと愛してくれる夫を信じたい気持ちとで揺れる前半。まだ生理用品が12%ぐらいしか普及しないインドの文化や思想、風習がよくわかって興味深い。10億人もの人口となった巨大な国はまだまだ貧困でトラブルも沢山だ。確かに、旦那さんが生理用品をいきなり作り出したらびっくりするし、それを村中に配り始めたら戸惑うよな。

もう1人は社会のために奮闘するラクシュミを救ったパリー。最初のお客さんだった学生のパリーは教養があってスマートで美人な女性だった。都会の大手企業に内定をもらっていたけど、ラクシュミからお金のためじゃなくて誰かを喜ばせるために働きたいという言葉が心を離さなくて、彼の仕事を手伝うことになってインド中を駆け巡る後半。パリーとシングルファーザーのパパとの関係も素敵だったな。伸び伸びと都会で成長して先進的でウィットに富んだ彼女はとても輝いていて思慮深い。

ラストの2人の選択は、とても胸を締め付けるけどなんだかとてもいい形だったようにも思う。

トラブルがあるのは生きている証だ。女性に虐げられながらも、女性への敬意を込めてつたない英語で話す国連でのスピーチはなんて優しいんだろう。それが自分のお金儲けのためではなくて、誰かに喜んでもらいたいという気持ちであることに感銘を受けます。

失敗しながらも優しさと愛をもってさまざまな困難を乗り越えて行く。そして既製品は55ルピーで売られていた生理用品をたった2ルピーで販売して、その広める仕組みとして村の貧しい女性たちの雇用につながっていくことも本質的でとても素晴らしかった。

善く生きることのヒントがたくさん詰まったエネルギーのある1本。
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