つかだめぐみ

ペンギン・ハイウェイのつかだめぐみのレビュー・感想・評価

ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)
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これが理想の夏である。
キラキラと光る太陽がなにもかもを鮮やかで眩しくさせてしまうのが夏という季節だが、これほど美しい配色で描くのは全くもってデタラメである。きれいな瞳を持つ人間が描く夏という幻想はこれほどまでに美しいというのに、現実の夏はなんだ。こんなにキレイな色になるわけなどない。
だがしかしこれを理想の夏と呼ぶには相応しい。鮮やかな空や木々、半袖のお姉さんの髪、ペタペタ歩き回るペンギンたち、よくわからない不思議な物体をも揺らして遊ぶ風は我こそが夏の爽やかさの象徴であると言わんばかりにサワサワと吹き渡っていて、否応なしに理想の夏でしかない。

「不思議」を徐々に解決していく物語の質の良さはさすが原作:森見登美彦であり、モリミーのヘンテコファンタジーをここまでキレイに絵にできるとはさすがスタジオコロリドである。

ペンギンができあがる時の動きは愛嬌の権化であり、その丸みはかわいいの化身であることは間違いない。ペンギンが生まれるたびに花が咲いた瞬間を見た時のような希少価値のある笑みを浮かべてしまった。

原作同様アオヤマ君のキャラクターが我々が持つ小学生の定義をこえずに、敬意を持てる小さなヒーローで、主人公として程よい。「おっぱい大好き」と「勤勉で優しく勇敢」のギャップがすこぶるかわいいので、我こそがお姉さんのポジションとなり、少年の大人になった姿を見届けたいと願いたくなった。

原作のハマモトさんとアオヤマ君の会話が大好きだったゆえに、ハマモトさんのセリフが少ないことが些か残念だったが、2時間の映画にまとめるなら仕方ない。万華鏡のように意味のわからないものが不滅に現れる大きな玉手箱のようなモリミーのエンターテイメントをキレイにまとめ尽くしたスタッフには1人に1匹ペンギンを差し上げようじゃないか。