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ペンギン・ハイウェイのdeenityのレビュー・感想・評価

ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)
4.0
以前『夜は短し歩けよ乙女』を見た時に教えていただいた映画。森見登美彦原作の作品です。
独特の世界観と特徴的な演出が魅力的に感じて本作も期待して見させてもらいましたが、『夜は短し…』と比べるとはるかに取っつきやすく、映像も万人ウケする感じでした。
別にそれ自体には何も問題はなくシンプルに楽しめたのですが、そもそも惹かれたきっかけは独自の作風だったので、そういう点では物足りなさもありましたが、そこは個人の感想ですね。

実際作品としては、一般ウケする可愛らしいペンギン達だったり、海の神秘的さだったり、ジャバウォックの不気味さだったり、全体のタッチの柔らかさだったり、自分が期待していたものとは違ったとは言え、これはこれで魅力を感じる作品ではありました。
事実どんどん作品に引き込まれていきましたし、何て表現したらいいかわかりませんが、些細な、それでいて絶妙なニュアンスが猛烈に癒されるんです。

本作で印象的なキーワードとして間違いなく挙げられるのが「おっぱい」でしょうね。そのおっぱいの魅力を語るアオヤマくんとか、「あれがおっぱいケーキだよ」って真顔で言うアオヤマくんに対して「本当にそんな名前なの?」って照れながら返すウチダくんとか。
「え、この作品を語る上で重要なポイントってそこ!?」ってつっこまれるかもしれませんが、その何気ないシーンが実によかったんですよね。もの凄く可愛らしくて、もの凄く可笑しくて、もの凄く懐かしくて、もの凄く温かい気持ちになる。そんなシーンの積み重ねが個人的にはこの作品の一番の魅力です。

「おっぱい」が重要と言いましたが、それはふざけているのでも何でもなく、大人への成長を表す象徴でもあります。つまりは少年・アオヤマくんが大人としての階段を一つ踏み出した成長の物語でもあります。
性を象徴するようなものが描かれたり、歯が抜け変わるなんてのもその一つでしょうし、冒頭での語りで自己中心的目線でしかなかった語りが後半ではお姉さんという他者を意識した語りが含まれたりとか、小さな世界の中で生きていたアオヤマくんが少しだけ成長していく過程を見せる。そしてこれからの成長を予感させる。そういう意図があると思います。

とにかく、期待していたものとは違いましたが、良い意味で期待を裏切ってきた作品でした。
あと声優の蒼井優も抜群に良いです!
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