ざわ

ペンギン・ハイウェイのざわのネタバレレビュー・内容・結末

ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

素敵なSFジュブナイル。
不思議なお姉さんとの一夏の思い出。そりゃあ魅力的ですわ。

テーマを細かく見ていくととんでもなく重い物語なんですが、全然そんな事なく描いているので好きです。

世界の歪みから力をもらって生かされている人が、実はその歪みを正すために生まれた、つまり歪みを正すことが使命なんだけどそれを果たすと消えてしまうって設定がもう好き。それを全然重くなく少年とお姉さんの一夏の甘酸っぱい出会いで描いてるのが良い。

あと、抑止力を発揮する側の生まれた意味を問うとかね。"その"ためだけに産み落とされたはずの存在なのに、ちゃんと人間として生きてしまい、他者と関わったが故に、生まれた意味を問うてしまうの、とても良くない……?そしてそれをライトに「私は何のために生まれたんだろうねえ」(うろ覚え)って言ってしまうお姉さんの明るさね。お姉さんの明るく元気で破滅的なところが良いよね。

歪みを正し、世界から消えるのが役目のお姉さんが、その世界に未練があるが故に、歪み修正機のペンギンを出すと同時にそれを喰らうジャバウォックも生んでいるって点も超好き。お姉さんが生きたい世界を救うためにそこから自らの手で消える……。でも消えたくないから矛盾する化け物を生む……。なんて最高な世界観なんだ!それをお姉さんが全部無自覚ってのも良いし。

ペンギンサーカスの団長からの一連のシークエンスがこの監督の持ち味を発揮してて超好きです。後半30分が本当良い。ゲームの三人称視点みたいな後ろからの目線が凄く良いです。

西島パパに能登ママに久野妹の時点で理想の家族かな……?って感じなのに、そこにドジ親友釘宮、強気クラスメイト潘めぐみ……?理想よくばりセットかよ。

西島パパの「考えることをやめてしまえ」の言い方が好き。この人の投げやりなセリフ最高ですね。

おねショタって感想よく見るけど、私的にこれはショタおねです。お姉さんがショタをよしよしするのではなく、お姉さんにショタがぐいぐい行くのです。ここんところ重要。

ハマモトさんの、「大人は手を出さないで!」もめっちゃわかる……!ってなった。子どもってそういうとこあるよな。子供の世界に大人が入ってきてほしくないやつ(ハマモトさんにはまあそれ以外の感情もあるんだけど)。

そして局所的に話題になってるペンギン・ハイウェイ性的問題ですが、あれは性的視点というよりかはアオヤマくんの研究者的視点なんじゃないかなと思います。作中でも言ってたけど母親とお姉さん、胸の形状は同じなのにどうして自分の捉え方に差があるんだっていう心理学?的な興味なんじゃないかなぁ。お姉さん徹底して乳揺れなかったしね。どうしてお姉さんにときめくんだろう、どうしてお姉さんの顔がこんなに好きなんだろうって疑問の延長線上というかね。

本作、典型的ビルドゥングスロマンなので、だれかその点から考察してください(他力本願)。千と千尋と似てるとか言われんのも、千と千尋も典型的ビルドゥングスロマンだからだと思います。

雑記

アオヤマくん、中身素直なだけの腐れ大学生感がするぞ…。
お姉さんと出会わなかった世界線の成長アオヤマくんが森見作品の腐れ大学生、お姉さんと出会った世界線のアオヤマくんがアオヤマ父 って感想を見てとても納得した。
そしてハマモトさんが居てくれてよかったね。同じくらい賢い子がいないと「僕は賢い」を変なふうに拗らせて高校とかで挫折して腐れ大学生になりそう。この子は森見作品に生まれてしまったが故に(私に)謎の因果を背負わされてしまった。何を言ってるんだ私は。

ウチダくんはヒロイン枠かな…?少年声釘宮好き……。

腰巾着に、城ヶ崎先輩と小津みたいなのがいて笑った。
ざわ

ざわ