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ペンギン・ハイウェイのmogのレビュー・感想・評価

ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)
4.0
ジョナサン・サフラン・フォア原作「ものすごくうるさくてありえないほど近い」と少し似てるなという印象。まあ近いタイミングで続けて見たからだけど。メンターとしてのパパとちょっとアスペルガー気味の聡明で魅力的な少年。研究ノートを作って自分の街をフィールドワークで駆け巡る。世界の危機と自分の心を直結させるセカイ系っぷりはこちらが一歩上か。 こちらでは3.11はそれほど前景化してないし少年に悲壮感は全然ないけれど。(映画としての出来はペンギン・ハイウェイの圧勝)

「スタニスワフ症候群」なんて出てきた後で正体不明の「海」との接触に話が進めば当然レムの「ソラリス」を意識させられるわけで、そうなるとお姉さんは少年の意識の産物なのか?って思いながら見るけど、そういうサスペンス的な展開には全然行かない。

お姉さんのペンギンを出す力の描かれ方もファンタジーでもSFでもなく日本風マジックリアリズムの空気感。これは森見登美彦節を(原作未読)うまく表してるんだろうと思う。

謎解きも、謎解きそのものよりも、それに取り組んでる時の空気感というかそれを楽しんでる感じが作品の魅力であるようなそういうところが、この映画のなんかホワホワした優しいものを見たような鑑賞後の印象になってるんだろう。

ジブリだとポニョも連想させられる。こっちの方が場面も穏やかで筋の運びもわかりやすくてスッキリ印象だけど。

世界の端っことしての「海」とか、世界の綻び、穴としての「海」とそれを修復する「ペンギン」とか、プロジェクト・アマゾンの調査によってわかる円環的に閉じた川とか色々魅力的な象徴がいっぱい用意されてるんだけど、それらは特に解釈されずに、お姉さんが自己犠牲的に穴を塞ぐという物語的な解決に向かって話は終わってしまう。

ジャバウォックだとかチェスだとか鏡の国のアリスへの言及も多い。ハンプティ・ダンプティは愛猫ダイナだったのか?という問いも、アリス自身が赤のキングの夢だったのか?という問いも映画では描かれず見るものに委ねられてる。

いや、「少年」にとっての「お姉さん」は大いなる謎であってまさに自分の世界の果ての向こう側なんだけど、その大いなる謎としての「お姉さん=おっぱい」は結局実在の他者であるというよりは自分の生み出した幻想あるいは内的な葛藤であって、自分の世界が存続していく、つまり大人になる過程で消滅していくものだみたいな、そういう話な気もしてきた。

いやいやそんな解釈もやっぱりどうでもいい。ウチダくんとハマモトさんかわいい。
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