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追想のausnichtsのレビュー・感想・評価

追想(2018年製作の映画)
3.0
男は追想し、女は回想する、どちらにしても男の妄想。

なかなか掴みづらい映画で、「追想」などという邦題やオチのようにくっついている2007年のシーンを主題として見るならば、老年の男が若かりし頃の失敗をまさしく追想する映画ということなんですが、ただ、映画の8割方を占める1962年のシーンから見えてくるのは、やや茶化し気味にも見える映画のつくりとは相反する、かなりシリアスな問題なのかもしれません。

そうした主題はともかく、チェジルビーチのシーンのカメラワークは結構美しいです。砂嘴にボートを一艘置き、フローレンスをぽつんと座らせ、エドワードが玉砂利(?)を踏んで近づいてくるカットにしても、背景が海か空しかないわけで、当然ながらからっとした青空ではありませんのでなんだか切なくなります。

ふたりの言い争いは、その位置関係や身体の向きで気持ちを表現したりしているのですが、最後がいいんですよ。

カメラはエドワード側からふたりをとらえています。台詞は記憶していませんが、フローレンスが許しを請います。エドワードは何も言わずゆっくり背を向けてしまいます。カメラは、正面からのエドワード、その肩越しにフローレンスをとらえたまましばらくあり、そしてフローレンスがゆっくりと振り向いて歩きはじめるにつれて、カメラもズームアウトしつつゆっくり移動し、フローレンスがエドワードから離れていくさまをフレームの両端にそのふたりをとらえたまま横からのショットに移動しつつ、なおかつズーマアウトしていくのです。美しいカメラワークでした。

このシーン以外はもうひとつです。

https://www.movieimpressions.com/entry/2018/08/18/175809
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