ノラネコの呑んで観るシネマ

ダーケスト・ウォーターのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ダーケスト・ウォーター(2017年製作の映画)
3.8
カリコレ。第一次世界大戦直後のアイルランド。
街はずれの森に建つ陰鬱な屋敷に、美しい双子の姉弟が住んでいる。
この家には「真夜中までには寝なければならない」「他人を招き入れてはならない」「姉弟は離れてはならない」という三つの家訓がある。
これを破ると、屋敷の“下”に住んでいる何者かの庇護を失うという。
まあ家訓の内容から双子が抱えている秘密は早々に予想出来てしまうのだが、かつて英国を追われたこの血統に生まれた者は、全員が若くして入水自殺を遂げている呪われた一族なのだ。
呪いに怯え家から一歩も出ない弟と、家を出て自由になりたいと願う姉の違いが葛藤を生む。
姉が元英軍帰還兵と知り合い、恋心が生まれたことで、何者をも逃さなかった呪いに綻びが生じる。
この時代のアイルランドならではの、反英感情と民衆の内部分裂が隠し味。
全体にすごく日本の少女漫画的な耽美な世界観で、特に萩尾望都や竹宮恵子の世代の香りがする。
結局一族の呪いの源が何だったのかよく分からないし、展開もメリハリに欠けるのだが、このムーディーな世界観はなかなか良い。