希望の灯りの作品情報・感想・評価 - 2ページ目

「希望の灯り」に投稿された感想・評価

TOCO

TOCOの感想・評価

3.6
11月9日はベルリン壁崩壊30周年だったので、東西ドイツ統一後のライプツィヒの日常を描いた本作をみてみた!
ひたすらに日常。こんなに美しく描けるのかというくらい美しかった。
東西統一で変わったことが日常に与える影響が、すごく繊細に描かれている作品だと感じた。
ただ主人公の行動がキモすぎた……笑
映画館で予告編を見た時に、好きそうな雰囲気だったので気になってたものの結局見逃してしまって悔やまれます。

タイトルの感じや無表情で無口な主人公、人物どうしの距離感なんかはカウリスマキっぽさもありますが、ハンガリー映画の「心と体と」に映像や全体の雰囲気が似ていると思いました。

ドイツの大型スーパー(コストコみたいなの)が舞台になってて、高い棚がずらりと並ぶスーパーの倉庫など、無機質で冷んやりした感じで、全体の描写も淡々としています。

フォークリフトでの商品の移動が何度も何度も映され、フォークリフト映画と言って差し支えないでしょう。
スーパーの商品管理というお仕事ムービーでもあり、こういうのはとても好物なので楽しく見れました。

タトゥーだらけの無口な主人公クリスティアンがスーパーに見習いで入ってきて、先輩従業員のブルーノから仕事やフォークリフトの扱いを教えてもらいながら、にこりともせず喋りもせず、静かに仕事が進んでいきます。

隣のお菓子セクションの女性マリオンに一目惚れし、少しずつ距離を縮めるも、中学生か!ってほどにシャイで奥手なクリスティアンが微笑ましく、ブルーノとも口数少なく愛想なしなのに信頼し合っていく感じも、淡々としているのに情を感じます。

このスーパーがある所はかつては東ドイツで、ベルリンの壁が崩壊した後東西ドイツが統一しましたが、この巨大スーパーは西側の資本主義を象徴しているようです。
若い世代のクリスティアンには東ドイツ時代のことがピンと来ませんが、ブルーノにとってはその時代が懐かしく、統一によって生活や仕事が激変し、二度と戻ることのない失ったものへの寂しさや喪失感、郷愁を抱えながら生きているのです。

クリスティアンもブルーノもマリオンも、他の従業員達も、それぞれが心に抱えるものがあり、孤独でもあるのですが、新しい時代に乗り切れない市井の人々が、ゆるく結びついて、互いの寂しさをそっと埋めてくれる、そういう関係があたたかくてじんわりときました。

あと、フォークリフトの教習用の教材ビデオがB級ホラーみたいでシュールで笑えました。
あのせいで、そのうち誰かがフォークリフトにヤラレる伏線になってるのかと思ってドキドキしてしまいました。

映像も美しく、いろいろありながらも毎日仕事をする働く人々が愛おしくなる作品でした。

109
shogo

shogoの感想・評価

4.0
カウリスマキに近いと評されていたので観賞した作品。近い要素はあったが、カウリスマキほど無常観は漂っていなかった。スーパーマーケットは何かの縮図、メタファー、オマージュのように感じられた。

クラシック、ブルース、サイケデリックと挿入歌のジャンルの幅が広く、シーンとうまくマッチしていた。
エイジ

エイジの感想・評価

3.6
最初はいい加減な奴の集まりか?って思わせておいて…実はみんかそこそこいい奴。そんな描き方が沁みます…。

何気ない平和な日常。
それこそが希望の灯り。


なんでもない日常とは、人との関わり合いの日々のこと。
てるる

てるるの感想・評価

3.8
ベルリンの壁崩壊後、ライプツィヒ郊外にある巨大スーパーマーケット(コストコ的な)。
新人として入ってきたクリスチャンを取り巻く人々の生活を描き出す。

ただ出勤し退勤する。
職場を出る頃には真っ暗で時間感覚を失う。

何か起きそうで起きない。
何も起こらないと思っていると起きる。

平穏に見える彼らの生活の裏にある苦悩。
ドイツ統一の影で割を食った労働者たちの姿を淡々と映し出す。

クリスチャン自身、たまに若気の至りでやらかすんだけど(不法侵入あかん!)、上司のブルーノが面倒見が良くて頼もしい。
脛に疵を持つであろうクリスチャンを受け入れ、優しく見守る。

すごく地味だけど、じんわりと染み入る人の温かさ。
誰もが何かを抱えてる。
でも周りに生かされていると思えば何とかやっていけるのかもしれない。

以下、ネタバレあり。








やっぱりなんと言ってもブルーノの末路。
「彼女が戻ってきた時、お前がいてやれ」と諭す場面。
全く姿を現さない奥さん。
なんとなく心のどこかで予想していたけど、やはり悲しすぎる。
明らかに旧東ドイツを懐かしんでいたけど、自殺に至った決め手は分からない。

でもクリスチャンがブルーノの分までしっかり生きて欲しい。
そう願わざるを得ない。
ちなみに昨日でベルリンの壁崩壊から30年。という訳で劇場ぶりに再見。

『ドイツの東西再統一から約30年。今なお耐え続ける夜の人々を照らす朝陽はいつ差すのだろうか』

東西再統一後、企業の民営化の波により多くの失業者を出した旧東ドイツ。それから20、30年が経ち、今も続く経済不振の中で静かに生き続ける労働者にスポットをあてた。
世間が寝静まる頃に単純労働に従事する人々が抱える、社会から消えてゆくような寂寥感と彼らが寄り添う中で感じる微かな美しさや温もりをこの映画は見事に写しだしている。


勤務明け、ブルーノに誘われて彼の自宅を訪れるクリスティアン。2人が真っ暗な室内に入ってくる。カメラはテーブルを軸に縦の構図で撮っている。セリフから妻と二人で暮らしていることが明らかになるが部屋に明かりがさすと奥行きと思われていたところにはのっぺりとした壁しかなく、閉塞感を感じる。自宅のようなパーソナルスペースを人物の心象とすることはよくあることで、この映像的な印象は後にブルーノの自殺として回収される。

シナリオにおいて白眉なのは、クリスティアンが欠勤しているマリオンの家を訪れるシーンだろう。本編の9割を職場と自宅の導線上で完結している上に、クリスティアンは自分を変えようだとか、コミュニティ内の問題を解決しようといった行動はとらない。ただ耐え忍び、寄り添うだけである。
そんな中、このシーンは自発的に導線上を離れ、細やかな犯罪性を持たせることで異色なシーンになっている。個人的にはこのシーンにもう少し象徴的なエピソードがあれば作品の評価は上がったところだが、手摺りの裏に身を隠す姿は子供のように微笑ましく、机に残した花束は慎ましやかな純真さにも思える。そこに終着することも憎めない。

東西統一からの急激な生活の変化に対して「適応」を求めるのは『グッバイ、レーニン!』(03)にも通ずるところだが、ブルーノのように適応できない人間を今でも抱えているのがドイツ社会の問題なのだろう。
リアリズム作品への常套句になってしまうが、トーマス・ステューバー監督は東西統一の狭間で忘れ去られた人々に灯りを当て、決して劇的ではない私達に生き続けることの難しさと偉大さを明示してくれた。
様々な美しい瞬間が同時にもの悲しさと憂いを帯びていて、不思議な感触を持った映画だった。
ファイ

ファイの感想・評価

3.0

このレビューはネタバレを含みます

最後に波の🌊音を表現するとは…
自分なら聴き取れたのかな?
無理かなぁ…
JBOY

JBOYの感想・評価

4.0
村上春樹の短編とアキカウリスマキを足して割ったような感触と言うか、自分としてはものすごく好みでした。外国の長距離トラックが走る高速道路沿いのあの絶妙な寂しさがたまらなく好きなんですよ。この暗さと、仄かなユーモアと、狭く小さなスケールと、わすがな灯りの下で生きる人たちのささやかな、けれども確かな人生模様に想いを馳せました。同じに見えていた日常の中に見えてなかった彩りを見つけるラストシーンが大好きです。
si

siの感想・評価

3.7
こういうテンポ感、結構好き。

フォークリフトの教材w

あのスーパー行ったら
要らんもんいっぱい買っちゃいそうだ。
カツマ

カツマの感想・評価

4.2
何も無さそうないつもの夜に明かりが灯る。それは優しさにも似た温もり、チカチカと点滅しては掠めるように横顔を照らす。この映画は孤独のように静かなのに、決して一人にさせない魅力があった。誰もがクラシック音楽のような響きを持って生きていて、日常のようなドラマチックを積み重ねてる。そう、心の底に決して見えない宵闇を抱えていると知りながら。

この映画を見て、アキ・カウリスマキの諸作が強烈にフラッシュバックした。市井の人々にスポットライトを当て、ミニチュア化された毎日に少しのドラマを植え付ける。その片隅で出会った誰かに愛を感じ、ほろ苦い日々に悲しみの果実が実りそれを頬張る。でも、それが人生。それは誰かの物語であり、我々普通人のための物語でもあった。悲しみはさざ波のように押し寄せるけれど、我々はその足音に気付かない。

〜あらすじ〜

舞台は東西ドイツ統合後の旧東ドイツにあるスーパーマーケット。そこに新人として採用されたクリスティアンは無口だが誠実な人柄で、上司であるブルーノともマイペースな関係を築いていた。スーパーマーケット内の規則は緩く、禁煙なのにタバコは吸うし、ブルーノは勤務中に仲間とチェスに興じたりしていた。そんなほのぼのとしたマーケット内でクリスティアンは歳上の魅力的な女性マリオンと出会う。マリオンはクリスティアンを新人君と呼び、凪ぐことのない彼の心にさざ波を立てた。だが、マリオンは結婚しており、それを知ったクリスティアンは仕事が手につかなくなってしまい・・。

〜見どころと感想〜

旧東ドイツを舞台にスーパーマーケット内で働くごくごく普通の人々を主役にしたスローライフ感漂うドイツ映画である。東西ドイツ統合後にその生活が少しずつ暗幕の中へと隠れていった人々の、どこか諦めにも似た郷愁がしみじみとした哀愁を誘う。それでも毎日のページをめくる人々の姿は皆明るくて、淡々と優しいものだった。戦後の東ドイツ、ではなく統合後の旧東ドイツで生活を一変させられた人々のその後をテーマとして扱っている珍しい作品だった。

主演のフランツ・ロゴフスキは『未来を乗り換えた男』の主演でもインパクトを残した現ドイツ映画の注目株で、今作ではドイツアカデミー賞主演男優賞を受賞している。また、マリオン役のサンドラ・フラーはあの『ありがとう、トニ・エルドマン』で娘役を担っていた彼女であり、二人の演技の画面への溶け込み具合がより一層物語の日常性を強めてくれていた。

カウリスマキ臭漂うスローな展開、抑揚の少ない人々、でもそれぞれに優しい心。カットも何だかのんびりしていて、そのせいかフォークリフトで飲料類を上げ下げするシーンがやたらと緊張した(笑)
クラシック音楽がエレガントに彩る普通の人たちによる優しいドラマ。その果てにある大いなる悲しみを抱きしめて、きっとこの物語はエンドロールの後にも淡々とした日々を刻むのだろう。

〜あとがき〜

今年のドイツ映画祭でも公開された今作は非常にミニシアターっぽい作品で、自分の好みのど真ん中を射抜いてくれました。正にカウリスマキの世界観なので、トーマス・ステューバー監督には彼の遺伝子が流れ込んでいるのを感じましたね。
もちろんカウリスマキ作品が好きな方、スローなドラマが好きな方に熱烈にオススメしたい作品です。

時代に翻弄されてその人生に暗い影を感じながらも生きていく人々。この映画は優しいだけではないけれど、悲しみもまた人生の主役になってしまうこともある。それでもなおダラダラと笑いながら生きていこう。愛する人を見つけ、叶わなくても愛することは生きていく理由になるはずなのだと願いながら。