るるびっち

空母いぶきのるるびっちのレビュー・感想・評価

空母いぶき(2019年製作の映画)
3.8
気づかい戦闘。思いやり攻撃。
平和憲法9条に縛られている自衛隊ならではのヘンテコな戦い方。
「専守防衛(こっちから仕掛けない)」「防衛出動(国がマジヤバい時やっとこ出動、でも守るだけ)」がキーワード。
とにかく、思い切り戦えない。
こっちからは攻撃できない。まず殴られてからでないと攻撃しない。
しかも戦争に拡大しないよう、なるべく相手を殺さないよう優しく攻撃。
ゴキブリを叩き潰すんじゃなくて、家の外に出るよう優しく箒でホイホイする感じ。
す~ごい気遣いして戦う。気遣い戦闘。

だから破壊力マックスの兵器なんか平気で使えない。
「これ使うと敵が死んじゃいますよ~」「しょーがないな、じゃあ体当たりしよう、それなら相手死なないでしょ」で、潜水艦同士がボッコン!!
ギャグか⁉ いや自衛隊は有事の際は、こうなるのだって。

「安全な所から撃てる兵器ありますよ」「破壊力デカいからNG、ギリギリまで近づいて威力の少ない大砲で撃て」「先に撃たれるがな」「ギリギリ避けて撃て、その為の訓練してるんやろ」思いやり攻撃。自衛隊っていい人💛
笑うより、ゾッとする。そんなコントみたいな戦い方で勝てる訳ない。
敵はこっちの命なんか何とも思ってない。当然普通に遠慮なく攻撃してくる。
「思い知れ~攻撃」だ。そっちの感覚の方がまともだわ。
こっちは「思いやり攻撃」どうかしてるけど、9条があるとそうなるらしい。
勝つことではなく、退けることが目的。ホイホイ戦闘。
映画では、「戦争をしないための戦闘」「命を奪うのではなく守る闘い」を強調して、平和や国民の命を守るため、敵も味方も無駄に命を損なわず、懸命に相手の攻撃をかわして戦力だけ削ぐように自衛隊が頑張っている姿を映す。
泣けてくる。
命を守るという、綺麗ごとのためではない。
こんなに気を遣わせて戦わせないといけないのか、気の毒だなと思う。
思い切り戦えないで、殺されたら無念だろうなぁ。

日本のトップが、いや国民ひとりひとりが平和ボケして曖昧な綺麗ごとの上に胡坐かいてる。アメリカが守ってくれる、戦争につながる武力保持反対、9条を守ろう。
でも尖閣諸島など、中国がたびたび領海侵犯しているのも事実。
その板挟みの中で、最前線の隊員は「気遣い戦闘」「思いやり攻撃」しないといけないのか・・・なんかゴメン。
こんな戦い方で大丈夫ですか? 平和守れますか?
それを国民ひとりひとりに突き付けて来る映画。
そろそろ真剣に考えないとなぁ、先送りしてきたツケが来そうだ。
「武力が無くとも平和は守れる・・・というのが幻想だと思い知らされた」
と映画内で総理大臣役の佐藤浩市が語る。

劇中、クリスマスカードの「世界はひとつ、みんなお友達」という安直なメッセージが映る。戦闘中に映るので、てっきり皮肉だと思った。
しかし最後に再びそのメッセージが映る時、本来は攻撃の時ではなく日常的に思いやりが世界には必要だろうと感じた。安直なことの実現がいかに難しいか。
舞台挨拶で出演者の吉田栄作が、
「戦争が無かった平成という時代を考え・・・」と語った。
確かに、我が国でも明治・大正・昭和と必ず戦争があった。
令和はどうなるのか? 映画を観て考えよう。
るるびっち

るるびっち