しめじろー

空母いぶきのしめじろーのレビュー・感想・評価

空母いぶき(2019年製作の映画)
4.0
おもしろかったです。これプロパガンダと揶揄されそうな危険を孕んだ題材ですけど…でもめちゃくちゃのめり込ませてもらいました。エンタメとして大満足です。

舞台はそう遠くない近未来。どこかの後ろ盾がありそうな過激派新国家「東亜連邦」(いや架空にしたの大正解でしょ!)が、日本南端の島「初島」を占拠し、戦後初となる防衛出動がついに発令されるXデーを描いた作品です。
戦争など誰一人として望んでいない中、状況は切迫し、自身の判断ひとつで自国・相手国問わず人命が失われるかもしれない究極の緊張が伝わってきます。相手の潜水艦が魚雷発射準備をしている。先に撃たなければこちらの潜水艦がやられる。しかし撃ってしまえば相手の潜水艦乗組員の命が失われ、さらに本格的な戦闘となり状況は悪化するだろう。他国からのプレッシャーもある。自衛であれば先に撃ってはいけない。ではこちらの潜水艦乗組員は人柱となるのか。艦長Aは撃ちましょうと言う。副艦長Bは退避しましょうと言う。さて艦隊司令官はどうする、何と命令すればいい?…もう終始こんな感じです。そう、この艦長Aと副艦長Bの対比がすごく上手くて、ともすればただの自衛隊紹介映画となりそうなストーリーをエンタメに昇華しているのはこの2人の考え方の違いにあると思います。どっちの言っていることも理性的で現代的で、すごいわかるじゃん…。こっちまで葛藤しちゃうよ…。だから、その葛藤の末の決断がどうかいい結果になりますようにと、祈りながら見てしまったのでした。その後やけに好戦的で何考えてるかわからない艦長Aが司令権を得るかたちとなって、観客はさらにハラハラさせられるのでした。ほんと上手いよ…。

終盤、記者が重要な情報を発信する展開には、強引にまとめてきました感がありちょっと作り物臭い。せっかくリアルだったのにな〜と残念に思うところがありました。しかし全体的にはシンゴジラをリアル寄りに濃縮したような見応えがあり、大変面白く見れました。なんかもっと政治的な映画なのかと思ってました。食わず嫌いは良くないですね。
しかし血の気が多い私は国防に向かないということがよく分かりました…。