みりお

ウトヤ島、7月22日のみりおのレビュー・感想・評価

ウトヤ島、7月22日(2018年製作の映画)
3.8
※レビュー溜め込みすぎたため連投💦
コメント返すの絶対死ぬほど遅くなると思われますので、どうかスルーをお願いします🙇‍♀️🙇‍♂️🙇




『大学での出来事』を観て、この作品がずっときになっていたことを思い出して鑑賞。

2011年7月22日、ノルウェーの首都オスロの政府庁舎前で爆破テロが起きる。
その直後、爆破テロと同一犯がオスロから40km離れたウトヤ島で銃乱射事件を実行。
政府庁舎前の爆弾で8人、ウトヤ島の銃乱射で69人と、単独犯としては史上最多となる77人の命を奪った事件となった。
そのうちウトヤ島の銃乱射事件の一部始終を、実際の銃乱射時間72分、発砲数540発を再現しながらワンカットで送る作品。

架空の人物・カヤを主人公に、見えない犯人から逃げ惑い、その中で身内を探し、友人の最期を看取り、そしてなによりすぐ側で鳴り響く銃声と叫び声に耐え続けた72分間…本当に息が詰まりそうだった。
残酷描写はほとんどなく、また犯人と相対するようなドラマティックな描写もない。
犯人を取り押さえに入るヒーローもいない。
600人の若者たちがキャンプ場で入り乱れながら、どこにいるかもわからない犯人から逃げ惑うからこそ、リアルで緊迫感がすごい。
72分間、銃声が止んでほんの少し希望を持つ度にまた鳴り響くを繰り返し、「まだ続くの?」と何度も絶望的な気持ちになったが、それこそがウトヤ島の被害者たちのリアルな感情だろう。
540発の銃声は果てしなく聞こえて、「どこに隠れよう」「どこに逃げよう」「いま動いて平気だろうか」「このまま泳いでみようか」など、何度も何度も考えた。
どれほど絶望的な気分だったんだろう…
被害者の一人としてウトヤ島事件を追体験することで、犯人に対して強い憤りを覚えた。

カヤと友人が「帰ったら何をしたい?」と夢を語るシーンがある。
「熱いお風呂に入りたい」
「ケバブが食べたい」
「国会議員になりたい」
「子供が2人ほしい」
若者らしい言葉が続き、彼等に輝かしい未来があるはずだったことが浮き彫りにされる。
世界中で後を絶たない銃乱射事件だが、若者の夢が全て絶たれた一部始終を見せることで、その極悪性が特に際立つ作品だった。

犯人は移民政策に対して独特の思想があり、それを世に知らしめるために事件を起こしたとのこと。
だが本作においては犯人がほぼ画面に映らないし、その思想が語られることはないし、なにより事件の一部始終だけを映しているので、その悲劇性だけがクローズアップされている。
Netflixオリジナル版『7月22日』では、ウトヤ島での生存者の再生と苦悩、そして犯人であるブレイビクという男の憎悪を描いているとのことで、位置付けとしては続編のように観られそう。
必ず近いうちに観てみなきゃ。


【ストーリー】

2011年7月22日午後3時17分、ノルウェーの首都オスロ政府庁舎爆破事件が起き、8人が死亡する。
同日の午後5時過ぎ、オスロから40kmの距離にあるウトヤ島で、労働党青年部のキャンプを楽しみつつ、オスロでのテロに不安を抱いていたカヤの耳に、突如銃声が聞こえる。


【スタッフ】

*監督:エリック・ポッペ
ノルウェー出身🇳🇴
主な監督作は『ヒトラーに屈しなかった国王』『おやすみなさいを言いたくて』など。
本作は、第68回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品されています。
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