10円様

ウトヤ島、7月22日の10円様のレビュー・感想・評価

ウトヤ島、7月22日(2018年製作の映画)
3.8
「シューエアンドレユーリ」はノルウェー人にとって忘れてはならない言葉らしい。意味は7.22。米国で言えば9.11。日本で言えば3.11みたいなものなのだと思います。アンネシュブレイビクが起こしたこのテロは、最大の単独大量殺人と言われていて、映画の中でも逃げ惑う被害者たちは最後まで「彼等」と言っているほど単独ではおおよそ不可能に近いであろう残虐性に極まりありません。

本事件に関しての映画ですが、ポールグリーングラス監督の「7月22日」を併せて鑑賞する事を激しく勧めます。こちらは事件発生前の労働党青年部の集会から銃乱射襲撃、犯人逮捕、聴聞会、裁判までを描き、被害者達の不条理に対しての恐怖が怒りに変わって行く過程も見る事が出来ます。一方本作「ウトヤ島〜」は恐怖のみを描き、ワンカットという手法がそれを見事なまでに増長させます。主人公を一人に絞り、狼狽する姿、死に直面する姿をずっと追いかけて行きます。監督はエリックポッペ。「ヒトラーに屈しなかった国王」の監督ですが、両監督の作風からするに「作品逆じゃない!?」とどうしても思ってしまいますね。
ちなみに「7月22日」はNetflixに加入しなくては観られません。いつか円盤リリースしても良いくらいの作品なのですがね。

何故この短期間のうちに同じテーマの映画が2作品も製作されたのかが不思議でした。調べて行くととても悲しくも恐ろしい現実にぶち当たります。
事件当初2011年から8年経った今、テロの生存者は中傷というには優しすぎる程の脅迫紛いを受けているというのです。「生存者は非国民だ」とか、「あの時死ぬべきだった」とか…しかもブレイビクを英雄視する流れもあるというのです。

日本でも連続殺傷事件やサリン事件等がありましたね。その首謀者を英雄だと崇拝する国民性は我が国にはありません(と信じたい)。しかしノルウェーではそれが国レベルで行われているのです。悲劇は風化どころか形を変えて歴史に残ろうとしています。映画はそれに対しての警鐘なのではないでしょうか。反社会勢力がネットを媒介にプロパガンダを展開している今、それに対抗するための武器なのだと思います。なので皆さんこの二作品は是非観てみましょう。

一方ブレイビクはというと、77人もの人間を殺しておきながらノルウェーでの最高刑禁固21年の判決で済み、獄中では待遇も良く通信制の学校に入学する許可をもらったらしいです。そんな中でもハンガーストライキで処遇改善を求め、その内容が刑務所でできるゲームをプレステ2からプレステ3にして欲しいなどがあったらしいです。ブレイビクの精神を疑うよりノルウェーの司法制度に呆れてしまう自分がいます。なんでもノルウェーの法の精神は「憎しみより救済をうんちゃら〜」というものに成り立つらしく、ブレイビクだけが特別ではない様子。

この人出所したら私刑に合いそうですね。
逆に合って欲しいと思う黒い自分がいます。それほどの映画なんです…
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