サラリーマン岡崎

ラのサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

(2018年製作の映画)
4.5
ある日の新宿武蔵野館にて、本映画の予告をみた。
よくある解散したバンドの再結成モノかー、と思ってみたら、途中で闇展開っぽいシーンが映し出され…
なんじゃこの映画は意味不明…ステキ❤︎
と、今思えばまんまと制作側の戦略にハマってしまった男がここにいる。

でも、ハマってしまったことが良かった。

正直この映画の物語をまだちゃんと消化出来ていない。
頭の中でこの映画を通して伝えたいことはまだ言語化できない。
でも、心に感じるものは確かにある。
レビューを書きながら、いろいろ模索していけたらと思う。

主人公慎平の思いは、解散したバンド仲間とまた音楽をつくっていくこと。
純粋に仲間のことを尊敬して、
1人でのデビューも断り、
ただただ純粋無垢に仲間との再結成を望む。

慎平の彼女のゆかりの思いは、慎平と結婚すること。
ライブで輝いていた慎平に一目惚れし、
金ヅル的な立場になろうとも耐え、
ひたすら好きでい続ける。

慎平の元バンド仲間の黒やんの思いは、
新兵への嫉妬と苛立ち。
バンドの曲を作っていたのは自分なのに、
慎平だけ、デビューのオファーが来た。
それの腹いせやどうしようもない思いから、
慎平をある事件に巻き込む。

その事件によって、3人の運命は変わる。

恐怖、支配、達成感…
もやもやと生きていた3人は
ある意味そのもやもやからは解放させられる。

特に事件前は慎平はバンドをやりたいという想いしか見えておらず、
ゆかりのことは蔑ろに扱い、
黒やんの思いも感じ取れず、
明らかに怪しいと感じられる事件にも足を踏み入れてしまう。
かなり自己中な男である。
しかし、事件後に知ってしまった元親友の思い。
それで変わるかと思いきや、事件後こそ、自分しか考えられない状態になってしまう…。

その期間にゆかりの暴走は加熱する。
登場人物がみんな常軌を逸した行動を取り始めるので、もうカオス。
そんなんで、3人とも終盤までかなり人間として堕ちていくから、
これはどう終わるのか?と不安になる。

と思ったら、突然現れるラスト。
堕ちて堕ちて、堕ちまくった彼らなのに、
ラストはなんでこんな胸に来るのか。
それは、やっと、自分だけでなく、
他人のことも見れるようになったから。
「愛とは与えるもの」と書くのも恥ずかしい言葉をよく聞くが、
相手のことを想って、何かをしてあげたいと感じることが、人間として一歩成長するところ。
だからこそ、本当に最後まで登場人物が堕ちきった姿を見せられたからこそ、
その一瞬の成長がとても輝かしく感じられたのかもしれない。

正直、「夢を追いかける」映画だと思っていたので、
このラストは現実的でもあり、
観ていたときはいろんな感情が渦巻いた。
けど、夢を叶えるのはまだ先かもしれないし、
夢を叶えるために前へ全然踏み出せていなかった主人公が、
他人のことを思えるようになったからこそ、
一歩前進したと思うと、
自分のことで精一杯な自分はまだその一歩も足りてないのかもと思ったり。

ふと普通に見に行ったら、上映後に福田麻由子と監督のトークショーがあり、
主要の3人にはそれぞれ劇中の曲の歌詞、バンド名、小道具などを考えてもらっていたよう。
もちろん役作りのために。
だからこそ、3人ともの演技がとても良かった。
自然体だからこそのめりこめた。

特に桜田通はとてもはまり役。
正統派なイケメンじゃないけど、
あのヒモ男のくせに態度クソな感じでも、
バンドやろうバンドやろうと厚かましくても、
なんか許せてしまうのは、
あの童顔の顔と純粋無垢な振る舞いからくるんだろうな。
前は王子様イケメン系よくやってたけど、
こういうダメだけど憎めない系やった方が合うと思う。
あと歌がメチャうますぎ。

毎日トークショーやったり、
劇場に観に来た人にしか観れない
YouTubeの限定公開の関連ドラマとか作ったり、
それも日によって与えられるドラマの種類が違ったり、
ちょっとプロモーションが代理店チックだなーと思ってたら、
監督が日テレさん。
どうりで、イケメン爽やかコミュ力高めな男の人だと思った。
何も勝てるところがなさそうだった。

とりあえず、書いたら、
映画を見たときの自分の感情がわかってきた!
これだから、レビューはやめられない。