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アイネクライネナハトムジークのMaUのレビュー・感想・評価

3.7
伊坂幸太郎、今泉力哉、斉藤和義、ということで期待値高めで臨みました。ほっこりします。仙台の町に、こんなオムニバスが散らばっているんだなぁ、って。人のドラマってこんなもんなんだろうな、積み重ねなんだよね、って…

日本初ボクシングヘビー級チャンピオンの誕生の日をきっかけにして交錯する人々のドラマ。出会いってなんだろう、と不器用に悩む佐藤(三浦春馬)を軸にして、その時と10年後の現在とが描かれる。

一応佐藤とその彼女が軸なのだけれど、私が好きだったのは現在の若い子達の話だな。いいよ、久留米、自分の言葉でがんばれって思う。それにひきかえ、佐藤の不器用さにはちょっとおいおい、となってしまう私。劇的な出会いとは、と悩む若き日はまだしも、10年たっても踏み切ってなかったのかい、って思うし、いやいや、そこでバスに乗せないで、とりあえず、って思うし。でも「いいんですか?」「だめなんですか?」は好きだったよ。

思うに、素朴に描くには少し三浦春馬と多部未華子が俳優としてビッグすぎて、もう少し素材的な人がよかったのかもしれないな、とは思う。でも嫌いじゃない。役者さんの中では、若手三人もだけど、なんといっても矢本悠馬君がいい!好き!「後でナイス判断だった、俺、って思える出会いが最高だ」「ベリーベリーストロング」という彼こそ最高だな。原田泰造さんは積み重ねの哀愁を体現してくれてホロッとなる。ハサミのエピソードにちょっと涙。あと、ボクシングの「大丈夫!」やファミレスの「私なら恐ろしくてお嬢様には…」もいい。散りばめられた台詞たちが愛しい。

積み重ねが人生。劇的な出会いとかでできてるんじゃない。そう思えたら、日々の小さなことを大切にしていこう。「小さな夜」が流れる町で、小さな小さなきっかけが積み重なって、愛しくてかけがえのないものになっていく。幸せも、ほろ苦い人生もどちらもあるけど、ね。仙台じゃないけど、劇場出てもずっと「小さな夜」が頭に流れてる…

とりあえず原作読みたい。
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